ホームズはそれを胸に押し当て、声を詰まらせた。



「何が探偵だ……好きな女ひとり、守れずに……」



 彼の頭の中に、美月の笑顔が次々と蘇る。


 紅茶を入れる仕草。

 頬を染めて怒る顔。

 そして――最後に見せた、あの涙混じりの微笑み。




 “ホームズ、あなたを愛してる”



その言葉が、心の奥でこだまする。



 ホームズの頬を伝う涙が、布を濡らした。
 汽車の音が、悲しみを煽るように轟き続けている。

 ――そのときだった。