美月は、自分のすべきことを悟った。




 ――この未来を、変えるために。
 ――ホームズを、守るために。




 心臓が強く鳴る。
 美月は一瞬だけホームズを見つめ、微笑んだ。




「ホームズ……あなたを愛してる。」

 そして、体を傾けた。



「まさか…っ!!」



「おい!!何をっ…!!」
モリアーティが抵抗する間もなく、二人は倒れていった。




「――美月!!!」



 ホームズの叫び。
 彼の手が、美月へと伸びる。



 だが、間に合わなかった。




 美月の体が、モリアーティを巻き込みながら、
 轟音の中へ――白い飛沫の中へと、消えていった。




 「美月ーーーッ!!!」



ホームズの叫びは、滝の音にかき消され、
 冷たい霧の中に溶けていった。