ーーーーー"ライヘンバッハの滝"。
美月はその名を知っていた。
この物語の結末を。
この先に待つ悲劇を。
モリアーティは笑みを浮かべ、ホームズに告げる。
「彼女を助けたくば――お前が滝へ飛び込め。」
美月の血の気が引いた。
「やめてっ! ホームズ!! 挑発に乗っちゃだめ!!」
ホームズは歯を食いしばり、目を閉じた。
頭の中で、ありとあらゆる突破法を考える。
だが――時間が、ない。
その時だった。
美月の脳裏に、ひとつの“言葉”が浮かんだ。
それは、彼女がこの世界に来る前に読んだ、
シャーロック・ホームズの小説の一節。
"君を確実に破滅させることができれば、
公共の利益のために、僕は喜んで死を受け入れよう。"



