モリアーティは、そんな彼女を見て嗤った。



「はははは!!なんて浅はかな娘だ。未来を変えるだと? 
愚かな幻想だ。
 こんな馬鹿げた娘を、私は捕らえようとしていたとは!」



 笑い声が車内に響く。
 その瞬間、列車が大きく揺れた。


 美月はバランスを崩し、モリアーティに強く掴まれる。

 次の瞬間、彼女の首筋に冷たいナイフが押し当てられ、
汽車の入り口へ引きずられ、落ちるか落ちないところのギリギリまで追いやられた。


ホームズが叫ぶ。


「やめろッ!モリアーティッ!」


 モリアーティは勝ち誇ったように言い放つ。



「この汽車のブレーキは壊してある。
 ――この意味が、お前にわかるか?」



「貴様ぁあっ!」



 ホームズの拳が震える。
 汽車の速度はどんどん上がっていく。


 窓の外では、轟音とともに霧が渦巻き、
 その奥に――落差数百メートルの滝が姿を現し始めてい
た。