そしてモリアーティは、美月の胸ぐらを掴んだ。
 その手は氷のように冷たく、力強かった。



「未来を知っているんだろう? ――では、教えてもらおうか。
 私はどうなる?」



 顔が近い。息がかかるほどの距離。
 美月は苦しそうに息をのみ、目をそらさずに言い放った。



「……あなたは、あの滝に落ちて死ぬのよ!」


一瞬、車内が凍りついた。
 ホームズが息を呑む。
 モリアーティの笑みがわずかに崩れた。



「……ほう、そう来たか。だが――それは嘘だな。」

「嘘じゃない!」



 美月は必死に首を振った。
 モリアーティは、その様子を愉快そうに見下ろした。



「では、なぜ――その“未来”をホームズに伝えなかった?」