汽車は黒い煙を吐きながら、山岳地帯へと向かっていた。
その振動が、まるで死へ向かう鼓動のように美月の体を揺らす。
拘束された手足、冷たい鉄の匂い、首筋に押し当てられた鋭い刃。
背後から伝わるモリアーティ教授の冷たい声が、耳を刺した。
「ずいぶんと勇ましい顔をする娘だ。
だが、すぐにその表情も絶望に変わるだろう。」
そう言いながら、モリアーティは美月の口元に縛っていた布を取り除いた。
喉がひりつく。声を出すと、涙が勝手にこみ上げた。
「……あなたなんかに、ホームズさんを渡すもんですか!」
震える声で叫ぶ美月。
だが、その瞳には怯えよりも、強い意志の光が宿っていた。
「モリアーティ教授……あなたの計画なんて、きっと潰れるんだから!」
その一言に、モリアーティは不適な笑みを浮かべる。
「ほう……それが未来を知る女の言葉か?」



