モリアーティの唇が歪み、冷たい笑いが車内に響く。



「美しいだろう? 彼女はこの先、誰もが知り得ない未来を知っている。
 つまり、私の帝国を築く上で最も魅力的な“鍵”なのだ。」




「……貴様ぁっ!」



 ホームズは叫んだ。


「美月を解放しろ!!」



 その声に、美月のまつげが震えた。
 ゆっくりと目を開く。



「……ホームズさん……?」



 意識が戻り、目の前に立つホームズを見つめる。
 その瞳に美月は涙があふれた。



「来て……くれたの……?」



 ホームズは、強く頷いた。


「当然だ。お前を守ると決めたんだ!」



 その瞬間、列車が大きく揺れた。
 嵐の前の静けさが、二人を包み込む。