2025-12-22
『26時、最後の別れ』
久しぶりに早起きをしようと思い
いつもアラーム設定をしないのに
時計のアプリを開いていた真夜中。
確か、時刻は深夜2時。
久しくアラーム設定を触ってなく
どんな感じだったのか手探りだが
チマチマといじるように設定した。
過去の自分がアラーム設定をした跡が
幾つも残されていてなんだか懐かしい。
「絶対に起きろ、さもなくば...」と
ラベルに書かれたアラーム設定とか。
「起きなくてもいいけど、起きれたら」と
ラベルに書かれたアラーム設定とかがあり。
どんな性格だったのかさえ思い出せない。
まるで過去の自分は、他人みたいな感覚。
こういう活動を始めてから
全く早起きをしなくなった。
時間はあまり、自分に必要がない。
それぞれ設定された時間と
それぞれ書かれたラベルを
舐めるように眺めていると。
「26時、最後の別れ」とあった。
はて、何のことやら。
もう、思い出せない。
けれどきっと、このときの自分にとって
大事な何かがあったのだとは感じ取れる。
僕は「最後の別れ」という単語に弱い。
次がないと察して、脆くなってしまう。
確か、5年ほど前のことだったか。
もう、これ以上に愛せないと思うほど
無数の愛を幾つも与えた女性のことが
ふと、頭の片隅でポッと浮かんできた。
時刻は深夜2時半を回り
眠りにつけず散歩をした。
このくらいの時間帯は僕に優しい。
微かに聞こえる音も眩い光も全て。
いつも野良猫がいる空き地に向かった。
冬、寒くて野良猫はそこにいなかった。
辺りはまだ暗くて、スマホの光がポツリ。
僕は自販機で缶コーヒーを買って啜った。
スマホの中には幾つもの思い出が詰まっていて
5年ほど開いていないファイルがあったことに
散歩中、気付いたから容赦もなく開いてみると。
さっき浮かんできた女性が
僕の書いた文章を朗読した
音声が1つだけ入っていた。
聞く。
嗚呼、思い出すべきではなかった。
鳥肌がぞわっとする感覚に襲われ。
それは寒さのせいなんかではなく
懐かしさにやられてしまったから。
声を聞いただけなのに
全てを思い出していた。
「26時、最後の別れ」の意味は
その女性の部屋を出る時間だった。
別れたけれど、最後に話したいと言われ
僕が女性の部屋へと訪れたあの日のこと。
26時を過ぎてもいいと思ったけれど
もう女性には新たな恋人ができていて
そのくらいの時間に帰ってくるからと。
僕を部屋から追い出すための口実だった。
手に持っていた缶コーヒーを啜る。
もう中身は飲み終わっているのに。
早起きするの、やめた。
僕は少しだけ散歩するつもりだったが
このまま遠くへ行ってみようと思った。
寒くて堪らないというのに
目から溢れる涙は温かった。
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『26時、最後の別れ』
久しぶりに早起きをしようと思い
いつもアラーム設定をしないのに
時計のアプリを開いていた真夜中。
確か、時刻は深夜2時。
久しくアラーム設定を触ってなく
どんな感じだったのか手探りだが
チマチマといじるように設定した。
過去の自分がアラーム設定をした跡が
幾つも残されていてなんだか懐かしい。
「絶対に起きろ、さもなくば...」と
ラベルに書かれたアラーム設定とか。
「起きなくてもいいけど、起きれたら」と
ラベルに書かれたアラーム設定とかがあり。
どんな性格だったのかさえ思い出せない。
まるで過去の自分は、他人みたいな感覚。
こういう活動を始めてから
全く早起きをしなくなった。
時間はあまり、自分に必要がない。
それぞれ設定された時間と
それぞれ書かれたラベルを
舐めるように眺めていると。
「26時、最後の別れ」とあった。
はて、何のことやら。
もう、思い出せない。
けれどきっと、このときの自分にとって
大事な何かがあったのだとは感じ取れる。
僕は「最後の別れ」という単語に弱い。
次がないと察して、脆くなってしまう。
確か、5年ほど前のことだったか。
もう、これ以上に愛せないと思うほど
無数の愛を幾つも与えた女性のことが
ふと、頭の片隅でポッと浮かんできた。
時刻は深夜2時半を回り
眠りにつけず散歩をした。
このくらいの時間帯は僕に優しい。
微かに聞こえる音も眩い光も全て。
いつも野良猫がいる空き地に向かった。
冬、寒くて野良猫はそこにいなかった。
辺りはまだ暗くて、スマホの光がポツリ。
僕は自販機で缶コーヒーを買って啜った。
スマホの中には幾つもの思い出が詰まっていて
5年ほど開いていないファイルがあったことに
散歩中、気付いたから容赦もなく開いてみると。
さっき浮かんできた女性が
僕の書いた文章を朗読した
音声が1つだけ入っていた。
聞く。
嗚呼、思い出すべきではなかった。
鳥肌がぞわっとする感覚に襲われ。
それは寒さのせいなんかではなく
懐かしさにやられてしまったから。
声を聞いただけなのに
全てを思い出していた。
「26時、最後の別れ」の意味は
その女性の部屋を出る時間だった。
別れたけれど、最後に話したいと言われ
僕が女性の部屋へと訪れたあの日のこと。
26時を過ぎてもいいと思ったけれど
もう女性には新たな恋人ができていて
そのくらいの時間に帰ってくるからと。
僕を部屋から追い出すための口実だった。
手に持っていた缶コーヒーを啜る。
もう中身は飲み終わっているのに。
早起きするの、やめた。
僕は少しだけ散歩するつもりだったが
このまま遠くへ行ってみようと思った。
寒くて堪らないというのに
目から溢れる涙は温かった。
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