2025-12-04
『かわいい』

「すぐに可愛いって言う男はさ」
「クズではないと思うんだよね」

スタバで燃え殻さんの本を読んでいたとき
横に座っている女子高生2人が話していた。

一旦、読んでいたページに栞を挟み
ホワイトモカをズズっと啜って飲む。

「どうしてクズじゃないと思うんですか」

僕はホワイトモカを机に置き
そう訊こうかと思ったけれど。

成人男性に突然話しかけられて
怖い思いをさせてしまいそうで
僕は知りたい答えを知らずまま。

栞を挟んでいたページを開き
どうにか本の世界に入り込み
女子高生の話を気にせずよう
読み進めたかったけれど無理。

「なんでクズじゃないの」

もう1人の女子高生が訊いてくれた。
まるで僕の思いを代弁してくれた神。

「えー、だってクズと言うにはさ」
「あまりにも単純すぎやしない?」

そんな理由で可愛いと言う男性を
クズではないと思うその子自身が
単純すぎやしないかと僕は思った。

「確かにそうかも」と僕の神も
共感するように頷いていたから。

君も単純すぎやしないかい!、と
ツッコミを入れてしまいたくなる。

容易に「可愛い」と言えてしまう男性は
僕から見ればクズかゴミか、それ以外か。

けれど女性が惹かれてしまう男性は
「可愛い」と言える男性なのだから。

僕に勝ち目はない。

半年前、付き合っていた彼女を
クズに奪われたことがきっかけ。

素直に僕は思いを伝えることができずに
素直に思いを言えるクズに彼女は惹かれ。

「可愛い」と言えなかった理由は
単に恥ずかしかったからではなく
品を褒めるみたいで嫌だったから。

けれど彼女は容易に褒めてしまう
男性を選んで僕を置き去りにした。

別れを告げることさえ、許されなかった。
連絡の頻度が減っていった末の自然消滅。

それからつい先日、彼女から
久しぶりに「ごめん」と連絡。

おそらくクズに捨てられたのだと
そこらの映画を観ていれば気付く。

既読をつけることなく、ブロックした。
周りを飛ぶハエみたいで気持ち悪くて。

それから今日、スタバで燃え殻さんの本を
ホワイトモカを飲みながら読んでいたとき。

女子高生がクズか否かの話を
横でしていたから思い出した。

可愛いって言える男はみんなクズだけど
可愛いとさえ言えない僕はクズ以下だね。

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