2025-11-10
『余裕と似た侮り』

「余裕のある人が好きって言うけどね」
「それってただ見下されてるだけだよ」

久しぶりに会った友人に相談をすると
早々にこんなことを言われてしまった。

喫茶店、混んでいない平日。
私と友人だけが居座る空間。

店員さんにも聞こえるような声量で
友人にそんなことを言われてしまい
恥ずかしくって「声大きい」と指摘。

けれど友人が声を大きくしてしまうほどに
私は理想を求めすぎた恋愛をしていたから。

それだけ私のことを思ってくれている気がして
「そうだよね、見下されてるだけか」と納得し
パンケーキを一切れだけ口に放り込んで食べた。

「余裕のある人って魅力的だよね」

私は子供っぽいと言われる性格のせいか
余裕があって大人っぽい人に惹かれては
都合よく扱われて捨てられることばかり。

悲しくて悲しくて、でも誰にも話せなくて
途方に暮れていたときに連絡をくれたのが
パンケーキを頬張っている友人からだった。

私と友人は地元の同じ大学に通い
私は就職をするために上京したが
友人はいっときフリーターだった。

が、今年から上京して就職をすることになり
私のことを思い出して連絡をしてきたのだと。

上京してから色々な恋愛を経験した。

どれだけ待たされても笑顔で応えて
既読にならない連絡に不安を抱いて
街中でばったり浮気中の彼に出会い。

この鬱憤を誰かに話して共感してもらいたい
せめて何かしらを話す相手が今の私には必要。

そう思っていたから自然と私は
友人に対して悩みを打ち明けた。

結果が、冒頭の言葉だった。

余裕のある人は魅力的に見えるけれども
実は見下されているだけなのだと思うと
これまで出会ってきた男性が恐ろしくて
これから先、出会う男性を信用できない。

「でも自立していて余裕のある男性はいいよね」

友人はボソッと言って、紅茶を飲んだ。
きっと本心ではないのだと察すけれど。

私のこれまでの恋愛を肯定している気がして
嬉しくって「そうなんだよね~」と共感した。

余裕のある人は人を見下す人だとしても
このときばかりは友人から余裕を感じた。

きっと、善い人だっている。

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