2025-11-14
『赤らんだ頬』
あなたに何を言われたのかを
私は明確に覚えてないけれど。
あなたに言われた言葉が
私を肯定していたことは
いつまでも覚えているし。
あなたの何気ない表情が
私の心を奪い去っていき
恋をしていたことまでも
忘れられずに生きてきた。
何を言われたのかだけが
明確に思い出せないだけ。
もう陽が落ちて暗くなった頃
あなたは私に会いに来てくれ。
目的地なんて設定していない
逃避行みたいな散歩を2人で
しているだけの夜だったけど。
あなたの低くて聞こえやすい声が
私に落ち着きを与えてくれていた。
散歩は気まずくなることもあるけれど
あなたとだけは気まずくなることなく
笑顔の絶えない散歩だったから嬉しい。
ちょっとした言い間違いを
繰り返して笑われたことも
嫌な気にはならなかったし。
あなたと一緒にいられるならと
最後まで尽くしたくて仕方なく。
私から行きたいとこを提案しても
「いいね」と賛成してくれたから
この人になら何でも言えそうだと
嬉しくて色々なことを話していた。
幸せだと思える時間こそが
一生続けばいいのにと願う。
けれど幸せだと思える時間は
瞬きをするような感じで消え
もう別れの時間となっていた。
「お会いできてよかったです」
そんなこと、別れの間際に言わないでよ。
本音はあなたに言えないままだけれども。
あなたの表情に少しだけ
寂しさが垣間見えたから。
「もう少し、歩きませんか」と言った。
このときの私は、緊張して震えていた。
けれどあなたはその言葉を遮るように
「ごめんね、予定があるから」と言う。
「そうですか、わかりました」と私は言い
あなたが乗る駅の近くまで送ることにした。
きっとこのときの私は
不貞腐れた表情をして
楽しくなさそうだった。
改札を通っていくあなたを眺め
振り返ってくれと祈りを込める。
通じたのだろうか。
こちらに振り返ってくれ
笑顔で手を振ってくれた。
嬉しくて、私も手を振った。
あなたが見えなくなるまで
私はずっと手を振っていた。
あー、もう少し話したかったな。
私は歩いて帰ることにした。
何分だったか、歩き始めて。
スマホが通知音を鳴らした。
あなたからだと思って期待。
「今日はごめんね、もっと話したかった」
スマホに書かれている文字を見て微笑む。
まるで付き合っている恋人同士みたい。
「こちらこそ、欲を言ってすみません」
あくまでも平然を装いつつ返信をした。
「寂しかったです、予定がなければ」
「もっと一緒にいたかったんだけど」
あのときの寂しそうな表情は
私との別れに対するものだと
気付いた私の頬は赤らみゆく。
冬、歩いていると暑くなって
頬が赤らんでいくこともある。
でもその赤らみは
恋のせいでできた
可愛らしいもので
なんだか、照れた。
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『赤らんだ頬』
あなたに何を言われたのかを
私は明確に覚えてないけれど。
あなたに言われた言葉が
私を肯定していたことは
いつまでも覚えているし。
あなたの何気ない表情が
私の心を奪い去っていき
恋をしていたことまでも
忘れられずに生きてきた。
何を言われたのかだけが
明確に思い出せないだけ。
もう陽が落ちて暗くなった頃
あなたは私に会いに来てくれ。
目的地なんて設定していない
逃避行みたいな散歩を2人で
しているだけの夜だったけど。
あなたの低くて聞こえやすい声が
私に落ち着きを与えてくれていた。
散歩は気まずくなることもあるけれど
あなたとだけは気まずくなることなく
笑顔の絶えない散歩だったから嬉しい。
ちょっとした言い間違いを
繰り返して笑われたことも
嫌な気にはならなかったし。
あなたと一緒にいられるならと
最後まで尽くしたくて仕方なく。
私から行きたいとこを提案しても
「いいね」と賛成してくれたから
この人になら何でも言えそうだと
嬉しくて色々なことを話していた。
幸せだと思える時間こそが
一生続けばいいのにと願う。
けれど幸せだと思える時間は
瞬きをするような感じで消え
もう別れの時間となっていた。
「お会いできてよかったです」
そんなこと、別れの間際に言わないでよ。
本音はあなたに言えないままだけれども。
あなたの表情に少しだけ
寂しさが垣間見えたから。
「もう少し、歩きませんか」と言った。
このときの私は、緊張して震えていた。
けれどあなたはその言葉を遮るように
「ごめんね、予定があるから」と言う。
「そうですか、わかりました」と私は言い
あなたが乗る駅の近くまで送ることにした。
きっとこのときの私は
不貞腐れた表情をして
楽しくなさそうだった。
改札を通っていくあなたを眺め
振り返ってくれと祈りを込める。
通じたのだろうか。
こちらに振り返ってくれ
笑顔で手を振ってくれた。
嬉しくて、私も手を振った。
あなたが見えなくなるまで
私はずっと手を振っていた。
あー、もう少し話したかったな。
私は歩いて帰ることにした。
何分だったか、歩き始めて。
スマホが通知音を鳴らした。
あなたからだと思って期待。
「今日はごめんね、もっと話したかった」
スマホに書かれている文字を見て微笑む。
まるで付き合っている恋人同士みたい。
「こちらこそ、欲を言ってすみません」
あくまでも平然を装いつつ返信をした。
「寂しかったです、予定がなければ」
「もっと一緒にいたかったんだけど」
あのときの寂しそうな表情は
私との別れに対するものだと
気付いた私の頬は赤らみゆく。
冬、歩いていると暑くなって
頬が赤らんでいくこともある。
でもその赤らみは
恋のせいでできた
可愛らしいもので
なんだか、照れた。
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