2025-12-05
『劇場』
「君の好きな映画を観よう」
そんなことを言われた木曜。
「そうだな、じゃあこれ観よう」
チケットを予約して入ったけど。
大きなスクリーンを前にして
観客は僕と彼女の2人きりで
「貸し切りだー!」と彼女は
浮かれている様子なのだけど。
映画が始まって数分も経てば
首をカクカクさせて眠そうな
仕草を彼女はしてしまうから。
少し悲しくなる。
恋愛映画だった。
冒頭では愛し合う2人が映し出され
映像が流れていくうちに喧嘩を経て
最終的に仲直りをして愛がこれより
強く結ばれるという結末だったけど。
彼女は喧嘩をする前で眠りに落ちた。
そして最終的にハグをするシーンで
目を覚ますと「素敵ね」と呟くから。
思わず「何を観てたんだよ」と
横からツッコミを入れたくなる。
僕の好きな映画で、君は眠った。
僕の好きなシーンを観ないまま。
辺りを見渡してみても
やはり僕らしかおらず。
きっとこの映画は大衆向けではなくて
刺さる人には刺さる映画なのだと思う。
僕には物凄く刺さったけれど
彼女には刺さらなかっただけ。
僕の好きな映画だったけれど
彼女は好きではなかっただけ。
それから数日後の話。
「君の好きな映画を観よう」
今度は彼女の好きな映画を
一緒に観に行くことになり。
チケットを予約するために
座席を選ぶ画面が表示され
ほぼほぼ席は埋まっていて
人気作なのだと感じ取れる。
その映画も恋愛映画だった。
けれど余命が限られたもの。
あと数年しか生きられない人が
抗えぬ恋に落ちてしまったけど
悲しませたくないと思って黙り
自分の病気を隠してしまう内容。
結果、それが相手にバレてしまい
病院まで見舞いに来るのだけれど
あまりにも平凡的で面白くはなく。
僕は眠ってしまっていた。
好きな人の好きな映画で
僕も眠ってしまう類の人。
誰かに起こされて目を覚ました。
劇場を掃除するスタッフだった。
彼女はとっくに僕を置き去りにし
劇場を後にしてしまっていたから。
LINEで「今どこ?」と送ったけど
未だに返信が来る気配なんてなく。
怒らせてしまったのだと
考えなくても想像がつく。
それ以上のことは連絡をせず
僕はそのまま家に帰ってきた。
そして今、これを書いている。
早くNetflixで公開してほしい。
きっと、もう一度観る機会があれば
僕は眠ることなんてないはずだから。
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『劇場』
「君の好きな映画を観よう」
そんなことを言われた木曜。
「そうだな、じゃあこれ観よう」
チケットを予約して入ったけど。
大きなスクリーンを前にして
観客は僕と彼女の2人きりで
「貸し切りだー!」と彼女は
浮かれている様子なのだけど。
映画が始まって数分も経てば
首をカクカクさせて眠そうな
仕草を彼女はしてしまうから。
少し悲しくなる。
恋愛映画だった。
冒頭では愛し合う2人が映し出され
映像が流れていくうちに喧嘩を経て
最終的に仲直りをして愛がこれより
強く結ばれるという結末だったけど。
彼女は喧嘩をする前で眠りに落ちた。
そして最終的にハグをするシーンで
目を覚ますと「素敵ね」と呟くから。
思わず「何を観てたんだよ」と
横からツッコミを入れたくなる。
僕の好きな映画で、君は眠った。
僕の好きなシーンを観ないまま。
辺りを見渡してみても
やはり僕らしかおらず。
きっとこの映画は大衆向けではなくて
刺さる人には刺さる映画なのだと思う。
僕には物凄く刺さったけれど
彼女には刺さらなかっただけ。
僕の好きな映画だったけれど
彼女は好きではなかっただけ。
それから数日後の話。
「君の好きな映画を観よう」
今度は彼女の好きな映画を
一緒に観に行くことになり。
チケットを予約するために
座席を選ぶ画面が表示され
ほぼほぼ席は埋まっていて
人気作なのだと感じ取れる。
その映画も恋愛映画だった。
けれど余命が限られたもの。
あと数年しか生きられない人が
抗えぬ恋に落ちてしまったけど
悲しませたくないと思って黙り
自分の病気を隠してしまう内容。
結果、それが相手にバレてしまい
病院まで見舞いに来るのだけれど
あまりにも平凡的で面白くはなく。
僕は眠ってしまっていた。
好きな人の好きな映画で
僕も眠ってしまう類の人。
誰かに起こされて目を覚ました。
劇場を掃除するスタッフだった。
彼女はとっくに僕を置き去りにし
劇場を後にしてしまっていたから。
LINEで「今どこ?」と送ったけど
未だに返信が来る気配なんてなく。
怒らせてしまったのだと
考えなくても想像がつく。
それ以上のことは連絡をせず
僕はそのまま家に帰ってきた。
そして今、これを書いている。
早くNetflixで公開してほしい。
きっと、もう一度観る機会があれば
僕は眠ることなんてないはずだから。
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