2025-12-23
『飛行機雲』
つい先日のこと、友達と散歩していたとき。
「見て、飛行機雲ができてる!」と
空を指して友達は可愛げにそう言う。
「ほんとだ、飛行機雲だ」と続けて
「久しぶりに見たな」と僕は答えた。
「飛行機雲ってさ、流れ星みたいじゃない?」
「持続的な流れ星って感じがして嬉しくなる」
そう言って友達は、胸の前に両手を合わせ
何かを祈っているような素振りをし始めた。
「飛行機雲に祈ってるの?」と馬鹿にしたけれど
真剣に祈っているようだったから僕も真似をした。
胸の前に両手を合わせて目を閉じて
「君と結ばれますように」と念じた。
風がビュービューと強い場所だった。
友達の髪の毛が僕の頬に触れてくる。
邪念は捨てなければならぬ、と思い
目を閉じたまま3回同じことを念じ。
僕が目を開けると友達は
僕の目の前に佇んでいた。
目を数分閉じていたから
少し眩しくて視界が滲む。
友達と目が合っていると気付く。
「何を願ったの?」と子供っぽく訊かれ
「内緒だよぉ」と冗談っぽく答えてみた。
頬をムッと膨らませた友達は
言葉に表せぬ可愛さがあった。
「そっちは何を願ったの?」と訊いてみたが
「私だって内緒だよぉ」と冗談っぽく言われ
僕だって頬をムッと膨らませてみたのだけど。
「何それ、気持ち悪い」と笑われ
「おい」と芸人っぽく突っ込んだ。
「でも素敵だね、飛行機雲を流れ星みたく」
「同じ意味として捉えることができる君は」
僕は、褒めた。
「えっへん」と言った友達は胸を張って
僕に向かって最大限の笑顔を放ってくる。
「そうでもしないと叶わないからね」
友達はただそう言って、歩を進めた。
友達の歩幅に合わせるように僕も続き
「僕もそうしないと叶わないかも」と
自虐っぽく友達を慰める意味でも言う。
「ほんとは何を願ったの?」と
先を歩いていた友達は振り向き
僕のほうを見つめて訊いてきた。
「私は君と結ばれたいって願ってた」
僕の答えよりも先に友達はそう言う。
緊張で、背中に汗が滴る感触。
「僕も君と結ばれたいって願ってたよ」
このとき、素直にそう伝えておければ。
僕は、無言だった。
喉から声が一切出なかった。
友達は勇気を出してくれた。
なのに自分は素直になれず。
無言の時間を気まずいと感じたのか
友達は「だと思ったよ」とだけ言い
さっきよりも歩く速度が速くなった。
振り向かない友達は続けるように
「これからも友達でいてね~」と
振り絞った声量で言ってきてくれ。
「うん」とだけ答えた。
どんなに願おうとも自分自身が
素直にならなければ叶わないと
今になって後悔してももう遅い。
友達は吹っ切れたみたく
今も僕と遊んでくれるが。
僕は友達と遊んでいく中で
幾つもの好きが増えていく。
後の祭りみたく、苦しさだけが残った。
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『飛行機雲』
つい先日のこと、友達と散歩していたとき。
「見て、飛行機雲ができてる!」と
空を指して友達は可愛げにそう言う。
「ほんとだ、飛行機雲だ」と続けて
「久しぶりに見たな」と僕は答えた。
「飛行機雲ってさ、流れ星みたいじゃない?」
「持続的な流れ星って感じがして嬉しくなる」
そう言って友達は、胸の前に両手を合わせ
何かを祈っているような素振りをし始めた。
「飛行機雲に祈ってるの?」と馬鹿にしたけれど
真剣に祈っているようだったから僕も真似をした。
胸の前に両手を合わせて目を閉じて
「君と結ばれますように」と念じた。
風がビュービューと強い場所だった。
友達の髪の毛が僕の頬に触れてくる。
邪念は捨てなければならぬ、と思い
目を閉じたまま3回同じことを念じ。
僕が目を開けると友達は
僕の目の前に佇んでいた。
目を数分閉じていたから
少し眩しくて視界が滲む。
友達と目が合っていると気付く。
「何を願ったの?」と子供っぽく訊かれ
「内緒だよぉ」と冗談っぽく答えてみた。
頬をムッと膨らませた友達は
言葉に表せぬ可愛さがあった。
「そっちは何を願ったの?」と訊いてみたが
「私だって内緒だよぉ」と冗談っぽく言われ
僕だって頬をムッと膨らませてみたのだけど。
「何それ、気持ち悪い」と笑われ
「おい」と芸人っぽく突っ込んだ。
「でも素敵だね、飛行機雲を流れ星みたく」
「同じ意味として捉えることができる君は」
僕は、褒めた。
「えっへん」と言った友達は胸を張って
僕に向かって最大限の笑顔を放ってくる。
「そうでもしないと叶わないからね」
友達はただそう言って、歩を進めた。
友達の歩幅に合わせるように僕も続き
「僕もそうしないと叶わないかも」と
自虐っぽく友達を慰める意味でも言う。
「ほんとは何を願ったの?」と
先を歩いていた友達は振り向き
僕のほうを見つめて訊いてきた。
「私は君と結ばれたいって願ってた」
僕の答えよりも先に友達はそう言う。
緊張で、背中に汗が滴る感触。
「僕も君と結ばれたいって願ってたよ」
このとき、素直にそう伝えておければ。
僕は、無言だった。
喉から声が一切出なかった。
友達は勇気を出してくれた。
なのに自分は素直になれず。
無言の時間を気まずいと感じたのか
友達は「だと思ったよ」とだけ言い
さっきよりも歩く速度が速くなった。
振り向かない友達は続けるように
「これからも友達でいてね~」と
振り絞った声量で言ってきてくれ。
「うん」とだけ答えた。
どんなに願おうとも自分自身が
素直にならなければ叶わないと
今になって後悔してももう遅い。
友達は吹っ切れたみたく
今も僕と遊んでくれるが。
僕は友達と遊んでいく中で
幾つもの好きが増えていく。
後の祭りみたく、苦しさだけが残った。
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