2025-11-18
『既読』

トークの履歴を見返してみると
幾つもの写真を送り合っていて
お互いが自分の見たそのものを
共有していたのだと思うと懐い。

今はもう、私がどんな連絡をしようとも
既読をつけられて終わってしまうばかり。

きっと愛想尽かされたのだと
考えなくても身に染みて実感。

あの頃は途轍もないほどに
充実をした毎日を過ごして
幸福に触れることができた。

ネット恋愛だった。

１度たりとも会ったことがないのに
ネット上では幾つもの言葉を交わし
お互いがお互い惹かれ合っていると
感じ取れるほどに愛が存在していた。

存在していた。存在していた。
もう過去形でしか文字紡げず。

その人は就職活動を頑張っている最中
色んな悩みを私に打ち明けてきてくれ。

「そうだね、大変だよね」
「無理は絶対にしないで」

私は寄り添ってあげることしかできなく
できるならば変わってあげたいと思った。

けれど、人生。されど、人生。

１人で生きるには寒すぎる、冬。
長い時間を経て、ようやく内定。

通話で内定を聞かされたときは
まるで自分事のようで嬉しくて
その人よりも大きな声で泣いた。

「泣かないでよ、ありがとう」
「悩み聞いてくれて助かった」

会ったこともない人にここまで心惹かれ
会ったこともない人の人生を心から応援。

就職してからも幸せは続き
相変わらずネットで投稿を
しているものに♡を押した。

それから数か月が過ぎ去った秋
その人の投稿頻度が極端に減り
なんだか不安で連絡してみるが。

既読をつけたまま、連絡なし。

既読がつくというのに連絡が来ないのは
あまりにも心が傷ついてしまいしんどい。

けれど追って連絡するのもなんだか
良くないような気配がしていたから。

幸せは呆気なく、沈んだ。
それからつい先日のこと。

もう何度、紅白歌合戦を見たことか。
それくらいに月日が流れた冬のこと。

「会っておけばよかったね」

その人はこんな投稿をして
数日後に垢自体を削除した。

気になって連絡をしてみても
既読がつくだけで進展はなく。

幾つもの写真を送り合った日々だけが
トーク履歴には残されていたから懐い。

「会いたかったね」

私もなんだか呟きたくって
ネットに本音を投稿するが。

誰も反応してくれなかった。

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