2025-11-23
『満潮』
ふと、会いたさが満潮になったから
「散歩しましょ」と連絡してみると。
「いいですね、散歩」
間髪を入れずに返信をしてきた女性。
僕の心を容赦もなく奪い去った女性。
出会いは、配信をしていたときのこと。
僕が駄弁っているだけの配信だったが
その女性含む数十人が聴いていてくれ。
「あはは、今日も楽しかったです」
「みんなも早く寝ろよ~、またね」
そんなことを言って配信を切った後
本を読んでから寝ようと思っていた。
活字を目で追うように読んでいると
どうやら人は眠くなってくるらしい。
眠くなった僕は少しだけスマホをいじり
睡眠用音楽を流して眠りにつこうとした。
そのときだった。
インスタの通知が画面に表示された。
誰かからのメッセージみたいなもの。
インスタを開いてメッセージを読むと
先程の配信を聴いていた人からの感想。
あまり感想を貰ったことがなかった僕は
なんだか嬉しくってその連絡を承認した。
そして「ありがとうございます」と返し
「引き続き、良き夜を」と続けて返した。
女性との出会いは、こんなものだった。
それからというもの、僕が配信をすると
毎度のように聴きに来てくれていたから
特別ではないのに、特別なように感じた。
これまでのふと話したくなって
配信をしていた僕はもういない。
ただ、この女性に話を聴いてもらいたく
配信をしているような生活が続いていた。
毎回、配信が終わってからは
感想が女性から送られてくる。
このときには既に
日常的な話ばかり
女性と話していた。
だから、自ずと惹かれてしまうのは
仕方がないと言えば仕方がなかった。
そんな或る日のこと。
出会いと別れに関する映画を観た。
その映画では出会えぬまま終わり。
会いたい人に会える状況ならば
会っておくべきだと感じたから。
その日は配信をするのではなく
その女性に一通だけ連絡をした。
「散歩しましょ」
初めて会うのに怖さを抱かなかったのは
とっくに毎日の一部になっていたからだ。
「いいですね、散歩」と女性。
「どこら辺かな?」と続ける。
まるで付き合っているみたいな。
淡い期待がぷかぷかと浮かぶ中。
「東京駅を散歩してみたいです」
「あまり行ったことがないので」
僕の選択肢の中に「断る」は存在していなく
「いいですね!行きましょ!」と返していた。
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『満潮』
ふと、会いたさが満潮になったから
「散歩しましょ」と連絡してみると。
「いいですね、散歩」
間髪を入れずに返信をしてきた女性。
僕の心を容赦もなく奪い去った女性。
出会いは、配信をしていたときのこと。
僕が駄弁っているだけの配信だったが
その女性含む数十人が聴いていてくれ。
「あはは、今日も楽しかったです」
「みんなも早く寝ろよ~、またね」
そんなことを言って配信を切った後
本を読んでから寝ようと思っていた。
活字を目で追うように読んでいると
どうやら人は眠くなってくるらしい。
眠くなった僕は少しだけスマホをいじり
睡眠用音楽を流して眠りにつこうとした。
そのときだった。
インスタの通知が画面に表示された。
誰かからのメッセージみたいなもの。
インスタを開いてメッセージを読むと
先程の配信を聴いていた人からの感想。
あまり感想を貰ったことがなかった僕は
なんだか嬉しくってその連絡を承認した。
そして「ありがとうございます」と返し
「引き続き、良き夜を」と続けて返した。
女性との出会いは、こんなものだった。
それからというもの、僕が配信をすると
毎度のように聴きに来てくれていたから
特別ではないのに、特別なように感じた。
これまでのふと話したくなって
配信をしていた僕はもういない。
ただ、この女性に話を聴いてもらいたく
配信をしているような生活が続いていた。
毎回、配信が終わってからは
感想が女性から送られてくる。
このときには既に
日常的な話ばかり
女性と話していた。
だから、自ずと惹かれてしまうのは
仕方がないと言えば仕方がなかった。
そんな或る日のこと。
出会いと別れに関する映画を観た。
その映画では出会えぬまま終わり。
会いたい人に会える状況ならば
会っておくべきだと感じたから。
その日は配信をするのではなく
その女性に一通だけ連絡をした。
「散歩しましょ」
初めて会うのに怖さを抱かなかったのは
とっくに毎日の一部になっていたからだ。
「いいですね、散歩」と女性。
「どこら辺かな?」と続ける。
まるで付き合っているみたいな。
淡い期待がぷかぷかと浮かぶ中。
「東京駅を散歩してみたいです」
「あまり行ったことがないので」
僕の選択肢の中に「断る」は存在していなく
「いいですね!行きましょ!」と返していた。
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