2025-11-26
『わっしょい』

「3・2・1」という掛け声をしてから
「わっしょーい」と言って写真を撮られ。

いま何が起こっていたのか
疑問に思ってしまった昨夜。

久しぶりに友人と飲みに行った。
様々な人が行き交う繁華街の中。

お互い、仕事が忙しくて
中々会えなかったけれど
やっと会う機会に恵まれ。

こうして同じ時間を共有しながら
ダラダラとくだらない話を始めた。

最近の恋人事情のことだったり
最近ハマっていることだったり
話の種は幾つも溢れ出してくる。

僕がまだ話しているというのに
友人は被せるように話したりと
酔いが回ってきた頃だったはず。

隣の席で飲んでいた女性2人組が
「お兄さん達仲良いんですね」と
話しかけてきたから「えへへ」と
僕と友人は照れて頭を搔いていた。

「なんか2人共いい笑顔だから」
「写真撮って送ってあげますよ」

そんな前振りだった。

僕も友人も断る理由なんてなくて
もはや断るほど正気ではなかった。

「ありがとうございます」と
舌足らずながらにお礼を言い。

僕と友人は隣同士で座り直し
スマホを持つ女性に向かって
取り繕った笑顔を振り撒いた。

「3・2・1」という女性の掛け声が
店内にこれでもかと響き渡っているが。

あまり恥ずかしくはなかった。
けれど次の言葉がこれまでに
聞いたことがなく衝撃だった。

「わっしょーい」

写真を撮るときにこの言葉を
選ぶ人は一体、この世の中に
何人ほど存在しているだろう。

きっとそれほど大勢ではない。
ざっと数えても数人程度ほど。

取り繕っていた笑顔が綻ぶほどに
このときばかりは場が和んでいた。

「わっしょーいって何すか」と友人は
すかさずツッコミを入れていたけれど。

僕はツッコミどころではなく
突拍子もなく思考が止まった。

「俺らもお姉さん達のこと撮りますよ」

そう言って友人はスマホを取り出して
お姉さん達に「ほらほら」と急かす中。

僕はどうすればこの輪に入れるのか
もはや入ることすらできそうになく。

麦酒をチビチビと飲みながら
その光景を眺めているだけで
なんだか満足をしきっていた。

「3・2・1」という友人の掛け声が聞こえ
取り繕った笑顔を作るお姉さん達だったけど。

「わっしょーい」

友人のその一言を聞いた僕とお姉さん達は
まるで家族みたく「お前もかい」と言った。

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