言の葉の泡

2025-12-12
『プレイリスト』

未だ元カノが共有してくれた
プレイリストの曲を聴いては
あの頃を懐かし気に思い出す。

1年前、僕と彼女は別れた。

好きな曲のジャンルも似ていたし
着ている服のジャンルも似ていた。

カフェで頼む飲み物も同じだったし
時間にルーズなところさえ似ていた。

彼女の「今家出た」という連絡は
「今起きた」という意味なのだが
僕も同じように認識していたから
「今起きたのね、おはよ」とだけ
返信して僕も出かける準備をした。

それくらい似通っていた僕らだったが
社会に出てからはお互いが忙しくなり。

連絡の頻度が減り
会う頻度も減った。

そんな或る日のこと。

「久しぶりにプレイリストを作ってみた」
そんな連絡が彼女から送られてきたから。

「僕のプレイリストも共有しとくね!」
自分のプレイリストを彼女に共有した。

彼女から送られてきたプレイリストを
シャッフルで聴いていたのだけれども
どれも僕のプレイリストに入っている
曲と似ているような感じがして思わず。

「同じプレイリストを共有したみたい笑」
「僕のプレイリストとそっくりだった!」

間髪を入れずに彼女から返信。

「ね、私も思わず驚いたよ笑」
「ほぼ同じで可笑しかったわ」

この連絡をした数日後に僕らは
別れに至るのだけれど詳しくは
彼女に許可を取らないと言えず。

別れた、その事実だけが残る。

どこかでちゃんと生きてくれていて
どこかで僕の知らない人に愛されて
どこかで笑顔で過ごしているのなら

もう、他に望むことはない。

数日ぶりに元カノのプレイリストを
再生しようかと思いアプリを開いた。

アップデート:2時間前とだけ
プレイリストに表示されている。

あの頃の僕らには到底
似つかない曲だったが
生きているのだと思い
なんだか嬉しくなった。

追加されていた曲は
僕が知らない曲調で
ただ流れているだけ。

1年という月日を経て彼女は変わった。
僕はいつまでも変われないというのに。

きっと僕が共有したプレイリストを
彼女はとっくの昔に消しただろうか。

それかたまに見てくれていないか。

淡い期待を抱きながら、あの頃に
聴いていた曲を1曲だけ追加した。

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