2025-11-27
『真夜中の男女』

どうして通話を切るときに
人は寂しさを抱くのだろう。

私もあなたも通話を切るのが苦手で
結局切ることなく夜が明けてしまい
仕事に行かなければならなく切った。

何か予定があって切る場合と
何も予定がなく切る場合では
寂しさの度合いが違ってくる。

真夜中、私もあなたも予定なんてなく
いつまでも話していそうな雰囲気の中。

流石に寝なければならなく
どちらが通話を切るべきか
話し合いが行われたけれど。

きっと「俺が切るよ」と言える男は
乙女の心を奪い去るほど魅力的だが。

きっと「私が切るよ」と言える女は
魔性的で男を掌で転がすのだろうが。

私もあなたも、そこまで強くはなく
そんな台詞を言えるはずもなかった。

寝なければ健康に悪いと知りながらも
私とあなたはまるで世界で2人みたく
真夜中の暗闇でひそひそと話している。

あなたの声が聴こえなくなった明け方。

イヤホンを通してあなたの寝息が
スースーと聴こえてくるから私も。

その寝息に合わせるように息を吸って吐き
気付くと通話を切ることなく眠りに落ちた。

目が覚めるともう、15時を回っていた。
外れたイヤホンが何処に行ったか探す中。

ふと、スマホに目をやるとまだ
通話が繋がったままだったから。

まだ通話繋がってたんだ、という驚きと
いびきを聞かれたか、という不安を抱く。

ベッドの下にあったイヤホンを手に取り
少しほこりが付いていたから拭き取った。

そして耳にはめて
「おはよう」と私。

何も返答がなく、まだ寝息が聴こえてくる。
どれほど深い眠りについているのだろうか。

もう眩しいとは言えないほど
陽が落ちようとしているのに
私もあなたも未だベッドの上。

きっと目覚めたあなたは驚くのだろう。
「あれ、もう日が暮れちゃってる」と。

そしてまた真夜中に2人きり
私とあなたの時間だけが続く。

そんな気がする。

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