——光の粒が、空に消えていった。
咲妃は、瞼の裏にまだ眩しい光を感じていた。
ゆっくりと目を開けると、そこは見慣れた図書室。
窓からは午後の光が差し込み、机の上には開いていたはずの古書が——なかった。
「……あれ……? 晴明、さん……?」
声を出したが、返事はない。
辺りを見渡しても、あの式神たちの姿も、平安の雅な景色もどこにもない。
ただ、現代の静けさだけがそこにあった。
咲妃は机に突っ伏し、涙が頬を伝った。
「夢…だった……の……?」
どんなに願っても、どんなに叫んでも、
二度とあの世界へ戻ることはできなかった。



