夕陽が差し込む図書室の窓は、ゆるやかに橙色をにじませていた。

 放課後の校舎は静かで、誰かの足音ひとつもしない。
 カーテンの隙間を通る風が、埃を金色にきらめかせながら踊らせる。

 東雲 咲妃(シノノメ サキ)は、指先でページの角を押さえながら、うっとりと文字を追っていた。

 高校一年生。長い茶髪に透き通るような白い肌、そして笑うとふわりと花が咲いたように可愛い。
 でも、本人にそんな自覚はない。

 ただ、歴史の授業が好きで――とくに、平安時代の“あの人”に憧れている。