友達になった人気者が、人間じゃなかった話

「ここじゃゆっくり話せないな。移動しよ?」

 くい、と唐突に腕を引かれ、驚きに目を瞠る。

「ま、待て。あんたこんなノリで授業サボったりする奴だったか?」
「しない奴だよ、久世くんもそうでしょ? けど今日くらい別に良くない?」
「いや良くないだろ」
「そうかなあ。俺はクラスの人から悪口言われて気まずいし、久世くんは武田くんたちと揉めて教室に居場所ないし、サボる理由的にはお互い百点満点じゃん」

 久世くんだって戻りたくないでしょ、と言われて言葉に詰まり、それきり僕は口を(つぐ)んだ。
 その沈黙を、清永は肯定と受け取ったらしかった。

 北校舎を四階まで進み、屋上に繋がる階段の前へ辿り着く。
 日常的にはほとんど使われない階段の四段目には、スタンドに雑に引っかけられたプラスチックのチェーンが垂れ下がっていた。チェーン中央の〝進入禁止〟のプレートが妙に仰々しい。

 それを、清永は当然みたいな顔で(また)いで越えていく。
 目が点になる。ああ、このチェーンって越えちゃ駄目だけど、別に越えられないわけじゃないんだ――自由すぎる清永の背中を眺めながら、そんな当たり前のことに気づく。