友達になった人気者が、人間じゃなかった話

「清永。あの、僕」
「ごめん。俺、今日は先に帰るわ」

 心配かけてごめんな、と僕の首を眺めながら笑った清永は、返事を待つことなく教室を去っていく。

 静かな箱の中に、僕ひとりがぽつんと残った。
 誰もいない教室の中で、浅い呼吸を繰り返す。一緒にいたのに『先に帰る』とわざわざ告げて教室を出ていったということは、今日はもう、清永は僕と話したくなかったのだろう。

 今から走って追いかければいいとか、まだ昇降口の辺りにいるはずだとか、そういう問題ではないのだと、鈍った頭にゆっくりと理解が広がっていく。

『全部忘れて、今の』

 清永はいつもそうだ。
 本当のことを隠す。本心なんて誰にも教えない。僕にも。

 僕はそれに傷ついている。
 この傷ってもう治らないのでは……床の上に立ち尽くしながら、ぼんやりとそんなことを思う。

 僕にはなにが足りなかった?
 なにが足りていれば、清永は僕に事情を打ち明けてくれた?

 胸に穴が空いたみたいな空虚が、しんとした教室の中でどんどん育っていく感じがする。
 薄ら寒さを抱えたきり、僕はひとりぼっちでのろのろと昇降口を目指した。