完璧な聖女であるのに愛されない私が外の世界で出会ったのは亡国の王女でした。


 私とシエナがディアーヌ帝国に辿り着いたその日の夜。私達はこのディアーヌ帝国の第一皇子であるロディス・ディオノーゼに案内された宿屋で帝都での夜を過ごしていた。

「綺麗な夜空ね」
「そうですね~」

 部屋にあるバルコニーに出て夜の空を見上げるように見ていた私とシエナは星々が瞬く綺麗な夜空を見ながら呟く。
 その日のディアーヌ帝国の帝都の夜空は雲一つなく暗い夜の帝都を照らすように星々が煌々と瞬いていた。

「ロディス皇子には本当に感謝ですね」
「ええ、そうね。この宿屋も安い割に綺麗だし、何より帝都を見渡せる高台にある宿屋なだけあって見晴らしが良いし最高だわ!」

 あの後、ロディス皇子に帝都を案内してもらい、帝都の色々な場所を巡ったのだ。
 初めて来た異国の地で、初めてみる景色に私とシエナは心躍らずにはいられなかった。

「カトレアさん、私、この帝都にまた来たいです。ロディス皇子にも改めてお礼したいですし」
「ええ、私もよ。また二人で来ましょう!」

 私はそう言い隣に立っているシエナの方を見て、優しく笑った。

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 一方、ディアーヌ帝国の王城ではロディスが己の騎士達とこのディアーヌ帝国の皇帝でありロディスの父親でもあるグアン・ディオノーゼからこっぴどく叱られていた。

「ロディス、お前って奴は本当に周りに心配ばかりかけてくれる……!!」
「申し訳ありません、陛下。もうこのような勝手な行動を二度としないと約束します。だから許して下さい……!」
「ロディス皇子殿下、前回も同じようなことを申されていましたよね?」

 ロディスの専属騎士であるバラッド・デュラセーヌは真剣な顔でロディスに問い掛ける。

「な、何のことだ? 私は同じことを言ってないぞ。デタラメを言うな」
「ロディス、お前は自分の言ったことを忘れたのか? 嘘はよくないぞ」

 グアンの言葉にロディスは言葉に詰まり、数秒無言になる。

 無言になったロディスを見て、グアンとバラッド含むロディスの騎士達数人は何を言ってこの場を切り抜ければいいのか考えているのだろうと察した。

「陛下、今日、帝都で私を助けてくれた者達がいたんですが、その者達の二人の内の一人がもしかしたら聖女だったかもしれないんです!」
「聖女だと?」
「はい!」
「なるほど。ロディス、言っておくが話しを逸らしても無駄だ。罰として二週間、帝都への外出は禁止だ」

 グアンの言葉にロディスはその場に硬直する。あまりのショックで言葉が出せないでいるロディスを見て、騎士達は少しばかり可哀想に感じながらも動き始める。

「さあ、ロディス皇子殿下、行きましょうか」
「わかったぞ……」
「偉いですね」

 ロディスの騎士の一人であるバラッドに手を引かれながら、ロディスは王の執務室から立ち去って行った。
 ロディスが出て行った後、執務室に残された騎士1名にグアンは命令を下す。

「ロディスが聖女であるかもしれないと言っていた者を探して、私の元に連れて来い。いいな?」
「承知致しました。陛下」

 騎士は頷き、グアンがいる執務室から出て行く。執務室に残されたグアンは執務室の窓越しに見える夜空を見上げて一人呟いた。

「聖女か……」