翌日の夕方頃。
 私はアディラーゼ王国とラバディース国の間にある森を抜けた。
 森を抜けた私は今、ラバディース国の港へ向かっている。

「此処がラバディース国の王都……!」

 私は両道に立ち並ぶ色鮮やかな建物を見つめながらラバディース国の王都を歩いていた。
 空が茜色に染まりつつあるが、王都は人々の賑やかな声で溢れていた。
 ラバディース王国とは少し雰囲気が違う王都の景色に私は胸を高鳴らせる。

「アディラーゼ王国の王都の建物はこんなに色鮮やかではないし、こんな縦に大きくないから何か新鮮だわ」

 縦に大きいビルのような建物が割と多く立ち並ぶんでいるラバディース国の王都。
 建築業が他国よりも圧倒的に発展していることで知られているラバディース国。

 近年はラバディース国の優れた建築技術を学ぶ為、他国から研修や留学で訪れる者達が増えているらしい。

「船が出るまであと1時間くらいね。思ったより余裕を持って港に着けそうで一安心だわ」

 ラバディース国の王都から港へと続く緩やかな坂道を下り歩きながら、私は左腕に付けていた腕時計を見てホッと胸を撫で下ろした。

⭐︎°⭐︎°⭐︎°

 出航の20分前に港へと辿り着いた私はディアーヌ帝国行きの船に乗り込む。
 
「人が多いわね」

 船内は学生や観光客。老夫婦や家族連れの人々が大半を占めていた。
 私はそんな人々を横目で見て歩きながら事前に予約していた部屋へと向かっていたのだが。

「あの、すいません。少しいいですか?」

 唐突に背後からそう声を掛けられた私は足を止めて声の主がいる方へと向く為、振り返る。

「何でしょうか?」
 
 私に声を掛けてきた相手は私と同い年くらいの青髪ショートボブヘアーの女の子だった。
 そんな彼女の空色の瞳は真っ直ぐこちらを見つめている。

「あの、私、部屋の予約を取り忘れてしまって。お金は払うので同室させて貰えませんか?」
「え……? 同室ですか!」

 見ず知らずの赤の他人にいきなり同室を頼むことに驚いた私だったが、目の前の自分と同い年くらいの彼女は真剣な顔で私を見てから、頭を深く下げてくる。

「どうかお願いします……!」  
「頭を上げてちょうだい! わかったわ、取り敢えず部屋に行きましょうか」

 人がいつ通ってもおかしくない客室の前の通路で頭を下げられている所を見られるのは非常に困る。取り敢えず部屋で色々聞くことにしよう。

 私はそう心に決めながら突如、同室させて欲しいと声を掛けてきた女の子と共に部屋へと向かう為、再び歩き始めたのであった。