エルドアナ国から出てから7日が経った。
あれから沢山寝て、船内の食堂に通って三食の食事をしっかり取るという毎日を過ごしていた為か少しずつ心も身体も元気になってきたような気がする。
「いい天気ね」
船内にある食堂で昼食を食べ終えた私は甲板へと出て、手すりに両手を置きながら、晴れた空を見上げる。
麗らかな昼過ぎ。
ゆっくりと流れていく時間の中、私の耳に穏やかな波の音と甲板にいる人々の声が届く。
快晴の空には青白く。
綿飴のようなふわふわとした雲がゆっくりと流れていた。
私は穏やかな雲が流れていく空を見上げながらふと思った。
これからどうすればいいのだろうか?と。
私がそんなことを思っていると、家族連れの親子の声が耳に入った。
「ねぇ、パパ、ママ! 私ね、とっても嬉しいの。パパとママと3人でこうして一緒に居られるの。とっても嬉しいの」
「あら、私もよ」
「ああ、これからもずっと一緒だぞ」
そんな親子の会話が胸が締め付けられた。
私にはもう家族がいないという現実を改めて突きつけられたように感じたからだ。
「そろそろ部屋に戻りましょう」
少し元気になった心はまた黒い感情で染まっていく。
◇ ◆ ◇
客室の部屋へと戻ってきた私は白いベッドの元まで歩み寄り、ベッドに倒れ込んだ。
「私はこれからどう生きていけばいいのかしら……」
一人呟いた声が静かな部屋の空気に溶け込むように消えていく。
私はそっと目を閉じ、意識を手放した。
夢を見た。
懐かしい夢を。
兄とお母様とお父様。
そして私。家族四人で机を囲み、他愛のない会話をしながら穏やかな夕食を取っている。
まだ生きている。
そう安堵して私がお父様、お母様。
そしてお兄様の名前を呼べば、三人の姿は煙のように消えていく。
そうだ。
もうお兄様もお父様、お母様もいない。
生きているはずがない。
息が苦しくなり、私は夢から覚めて目を覚ました。
「私、あのまま寝てしまっていたのね。嫌な夢ね……」
ベッドから身体を起こして、時計を見ればもう五時過ぎであった。
大分、寝てしまっていたようだ。
「お腹空いたわ。食堂に行きましょう」
私は空腹感を感じ、髪とシワがある服を整えてから客室の部屋を後にした。
部屋を出て、客室がある通路を歩き出すと、何処かの部屋から漏れて聞こえてくる人々の声や、音楽やTVの音が耳に入る。
私はそんな客室の通路を足早に歩いて、食堂へと向かった。


