お姉様がいなくなってから2ヶ月半が経ち、行方知れずになる前にお姉様がこなしていた仕事は全て私に回ってきた為、休む暇も時間もない日々を過ごしていた。
私のお姉様はこのアディラーゼ王国の最強の聖女と呼ばれている。
私はそんなお姉様の妹であり、このアディラーゼ王国の聖女でもある。
「お姉様がいなくなってからもう2ヶ月半も経つのね……」
お姉様が行方知れずになったあの舞踏会が行われた日。お姉様は婚約者であったデュース・ヴィリス様に婚約破棄をされた。
デュース様がお姉様に婚約破棄をしたのは私と結ばれる為。
そう、私がお姉様の婚約者であるデュース様を奪ったのだ。
私は舞踏会の日の事を思い出しながらアディラーゼ王国の王都を歩いていた。
王都の大きな通りを歩きながら晴れた空を見上げれば青白く澄んだ空の色が私の瞳に映る。
「お姉様は今どうしているかしら……」
⭐︎°⭐︎°⭐︎°
翌日。私はアディラーゼ王国の第一王子であり、年内には私と婚約する予定のデュース・ヴィリス様に呼び出されて王城へと訪れた。
「久しぶりですね、アリス。元気にしていましたか?」
「勿論、元気にしていましたよ!」
「それならよかったです」
私とデュース様は王城の中庭を歩きながら、互いの近況を話したり、私の仕事の話しをしたりして会えなかった分の会話をした。
「カトレアが居なくなってからもう2ヶ月半が経つんですね」
「はい…… お姉様がいなくなったのは私がデュース様を取ってしまったからだと思うんです」
お姉様は婚約者であるデュース様のことをきっと愛していた。と思う。
だってデュース様を見るお姉様は恋する乙女の顔をしていたんだもの。
「アリス、あまり自分を責めてはいけませんよ。私はこれから先、一緒に側にいるのはアリス、貴方が良いと思ったから。愛しているからカトレアと婚約を破棄し、貴方を選んだのです」
デュース様の真っ直ぐなエメラルドグリーンの瞳が私を見つめてくる。
私はそんなデュース様を見つめ返して「そう思ってくれて嬉しいです。私もデュース様のことを愛しています」と伝えた。
「カトレアの行方は王立騎士の方達に今、探させていますから。カトレアの行方がわかったら教えますね」
「はい! デュース様、ありがとうございます」
私はデュース様を見て柔らかい笑みを溢せば、デュース様は優しく笑い私の頭を撫でてくる。
私はそんなデュース様の行動に心が温かくなるのを感じた。
お姉様と幸せになる相手だったデュース様。しかし、彼は私を選んだ。お姉様ではなく私を。
お姉様には悪いと思っているけれど、私はこれからもデュース様の隣をお姉様や、他の誰にも譲りはしないだろう。


