帝都の王城へと帰って来た私達は皇帝に魔物を倒したことを報告した。
「倒してくれて感謝する。騎士達からも聞いたが、ほぼ二人で倒したそうだな」
「はい。騎士の方達は魔物の攻撃で負傷してしまい。私と隣にいる者で倒しました」
「そうかそうか。ん? そなた、何処かで会ったことある気がするな……」
皇帝は私の隣に立っているシエナを見てから、何かを思い出そうと眉間に眉を寄せる。
「グアン皇帝陛下、私はエルドアナ国の第一王女シエナ・アメリアと申します。名乗るのが遅れてしまい申し訳ありません。陛下とこうしてお会いするのは、私がまだ幼き頃、ディアーヌ帝国の王城で行われた舞踏会以来ですね」
シエナと皇帝はどうやら顔見知りらしい。
シエナからの言葉を受けたグアンは驚いた顔をシエナに向けていた。
「これは驚いた。しかし、何故、シエナ王女殿下が聖女様と一緒にいるんだ?」
「エルドアナ国でクーデターが起こったんです。私は側近のお陰で何とか国外へ逃亡して、逃亡途中で聖女であるカトレアさんに出会って今に至ります」
シエナは目の前にいるグアンを真っ直ぐ見つめて、自分が置かれた状況を淡々と説明した。
「そうだったのか……」
「はい、王族は皆、殺されてしまいました。自国に帰っても私は殺されてしまう可能性があるので、カトレアさんと外の世界を巡って旅をしているのです」
シエナはそう述べてから優しい笑みを浮かべる。グアンはそんなシエナを見て「そうか。聖女と旅とは楽しそうだな」と静かに返答した。
その後、私は皇帝から報酬を受け取り、シエナと共にグアンがいる玉座の間を後にしたのであった。
⭐︎°⭐︎°⭐︎°
その日の夜、私はシエナと共に客室にあるベランダに出てディアーヌ帝国の夜の空を見ながら他愛のない会話をしていた。
「綺麗な夜空ね」
「そうですね。あの、カトレアさん、ごめんなさい。私、本当は自分の身は自分で守れるくらい強いんです。それなのに護衛をしてほしいって頼んでしまって」
「シエナ、貴方があんなに強いことにはびっくりしたけれど。そのことは気にしてないわ。だからいいのよ」
シエナは私の言葉に「ありがとうございます」と言い穏やかな笑みを溢す。
私もそんなシエナを見て微笑み返し、再びディアーヌ帝国の夜空を見上げた。
「強くても、一人だと孤独で。一緒にいてくれる人が欲しかったんです」
「そうだったのね。私も心のどこかではそう思っていたのかもしれないわ……」
私がそう言えば隣にいるシエナから「一緒ですね!」と返ってきた。
夜の穏やかな風を感じながら私はこれからもシエナと一緒にいれますように。と心の中で願ったのであった。
⭐︎°⭐︎°⭐︎°
次の日の朝。私達は皇帝と第一皇子のロディス。共に魔物を倒しに行った王立騎士の方達から見送りを受けた。
「改めて魔物を倒して頂き感謝する。また帝都に訪れた際は顔を出しに来てくれ」
グアンは私とシエナにそう言い優しく笑った。私達はグアンの言葉に頷き返し、軽く会釈をしてから王城に背を向け歩き出した。
王城を出た私とシエナは帝都へと続く道を歩きながら他愛のない会話をし始める。
「いい天気ですね! カトレアさん」
「そうね~」
歩きながら空を見上げれば、雲一つない澄んだ空の色が私の瞳に映る。
穏やかな風が吹く度に自身の髪がサラサラと揺れる音が私の耳に心地良く届いていた。


