翌日の昼過ぎ頃。
 私とシエナ。そして帝国の王立騎士団に所属している数人の騎士達は魔物が出るというディアーヌ帝国の左端にある森林へ訪れた。

「此処が魔物がいる森林……」

 隣を歩いているシエナは緑豊かな木々を見つめながらポツリと呟く。

「こんな穏やかな所に魔物がいるなんて、信じられないわね」
「そうですよね。ん? 今のは!?」

 王立騎士の一人が何かに気付いたように周り見回し始める。私はそんな騎士である彼の行動に魔物が現れると瞬時に察知した。
 木々が揺れ、ザクザクと魔物が近寄ってくる足音が聞こえてくる。

「来るわね……」

 私やシエナ。騎士の方達は警戒しながら、魔物が近寄ってきている方向を見つめる。
 数秒の沈黙の後、"ギュアーーーー" っという魔物の叫び声と共に私達の目の前に魔物は現れた。
 赤い瞳に黒い鳥のような姿をした魔物は私達を見て威嚇してくる。そして、数秒後、魔物は私達に襲い掛かかってきた。

「動きを封じたわ! やるなら今よ!」

 私が光魔法で動きを止めたことを王立騎士の方達に伝えれば、騎士の方達は私の光魔法で動きが止まった魔物に攻撃を仕掛ける。
 騎士の方達は魔物を剣で切り付けたが、魔物は全くダメージを負うこともなく、動きを静止する光魔法が解け始める。

「危ない! 離れてください!」

 私の声は騎士の方達には届かなかった。
 魔法が解け始めてきたことにより、魔物は攻撃を仕掛けてきた騎士達目掛けて口から炎を放ち始める。
 逃げ惑う騎士の方達。一人、また一人と騎士の方達は炎に包まれていく。

「絶体絶命ね…… こうなったら私がどうにかして倒すしか……」

 私がそう呟くのと同時に私の背後にいたシエナは私から少し離れた斜め前辺りに倒れている騎士の元まで走り去って行く。

「ちょっと、シエナ!」

 私の声を無視して、シエナは倒れた騎士が持っていた剣を拾い、何かを唱えて興奮状態の魔物にすばやい動きと速さで立ち向かっていく。
 私はそんなシエナを見て度肝を抜かされる。
 
「動きを止めたわ! シエナ、今よ! とどめを刺しなさい!」
 
 私の声にシエナは頷き、思いっきり地面を蹴って、動きが止まった魔物を凄い速さで切り付けていき、軽くジャンプをしたかと思えば、連続で魔物を切り付け始める。
 あまりの華麗なシエナの剣捌きに私は思わず見惚れる。
 そして、とどめの一撃、魔物の頭部をシエナが長剣で刺すのと同時に私の光魔法は解けた。

「はぁ、よかった…… 倒せたわね」

 安堵からか力が抜けた私はその場に座り込む。魔物を倒したシエナも私と同様、魔物を倒せたことにほっとしたのか倒した魔物近くに座り込んでいた。

 そんなシエナは私の方を見てニコッと笑いかけてくる。私もそんなシエナを見て自然と笑みが溢れた。

 その後、私は負傷した騎士達を光魔法の一つ。回復魔法で騎士達を治してから、帝都の城へと戻る為、魔物がいた森林を後にしたのであった。