『結里(ゆいり)の子育てが落ち着いたら、またフルタイムで仕事したいな』

　それは恭介(きょうすけ)の妻、雪乃(ゆきの)が生前に言っていたことだった。
　しかし、それは叶うことなく雪乃は病気で亡くなってしまう。

　そして今、恭介の前には一匹の三毛猫がいる。
　顔、お腹、足は白く、背中の一部は黒、そして後頭部から首にかけてオレンジっぽい茶色の毛並みの三毛猫だ。
　三毛猫は三歳になる一人娘、結里の髪を器用に編み込んでいる。結里がよく雪乃にやってもらっていた髪型だ。

「まさか……雪乃なのか……？」
　恭介は恐る恐る、そうであって欲しいと願いを込めて三毛猫に聞いた。
　すると三毛猫は「みゃあ」と満足そうに鳴き、コクリと頷いた。