「お待たせしました。殿下、アリア様」

 坂道の上から、走って来たのはミカルの護衛騎士の一人であるディオール。
 そして、その後ろにディオールが連れて来たミカルの騎士であろう若い男が三人。

「ああ、グレイ、シバン、リド。昨日の朝振りだな」

 ミカルはディオールが連れて来た自分の騎士であるグレイ、シバン、リドの三人の姿を見るなり、弾んだ声でそう言う。
 
「ん? その娘は誰ですか?」

 オレンジ色の髪をした男は、ミカルの隣に立つアリアに気付き、興味深そうに見てくる。
 
「この娘は俺の命を救ってくれた恩人だ」

 ミカルの言葉にアリアはそこまで大袈裟に言わなくてもいいのではと思いミカルを見る。
 ミカルはアリアのそんな思いをわかってか、優しく微笑みアリアの肩をぽんぽんと叩く。

「そうなんですか! 殿下、何か危険な目に遭ったのですね?」
「昨日、帰って来なかったから、心配してたんですよ」
「本当、ご無事で何よりです」

 三人の若い騎士達はそう口々に声にする。そんな騎士達を見ていた同じ役職でもあるディオールは咳払いをし口を開く。

「この娘に、軽く自己紹介してもらってもいいか?」
「大丈夫ですよ。俺の名前はシバン。ミカル王子に仕える騎士の一人です」
「俺はリド。ここにいる騎士達の中で最年少です。もしかしたら、歳が近いかもしれないですね」
「俺はグレイと言います。ディオールとは同い年です」

 ミカルの騎士である三人の若者がアリアに自己紹介し終わると、アリアは軽く頭を下げて自分も挨拶する。

「私はアリアと言います。昨日、王都でミカル王子殿と知り合いました」
「そうだったんですね」
 
 歳が近いですね。と言ったリドというオレンジ色の髪をした男はアリア見てそう返し、優しい笑みを浮かべる。
 アリアはリドの笑顔を見て爽やかな笑顔だなぁと心の中で呟く。

「お前達、三人を呼んだのは、暫く城に戻ることが出来ない状況になったからだ。今から、話すことは他言無用だ」

 ミカルはそう告げ、話し始める。
 アリアと出会った経緯、アリアに未来を見ることが出来る力があること。そして、昨日、二回目にアリアが見た未来は、自分が城に戻ったら起こってしまう事であるということ。
 
 全てを話し終えたミカルに、後から来たグレイ、シバン、リドの三人の騎士達は「なるほど」と頷く。
 どうやら、全てを理解したようである。

「わかりました。此処に長居はあまり出来ませんね」
「そうですね」
「ああ、では、皆んな、宜しく頼む」

 ミカルの声に四人の騎士とアリアは頷く。
 そして、ミカル達は城を背にして、また歩き始めた。