自分に不思議な力が備わっていることに気付いたのは、幼少期の頃であった。
まだ、何の力であるかも理解していなかった頃、今は亡き両親は私の力に気付き、忠告してくれた。
『アリア、決して貴方が持っている力のことを他人に教えてはダメよ』
『なんでだめなのっ?』
『それはな、お前のことを悪い大人が利用しようとしてくるからだよ。お父さんとお母さんは、アリアが悪い大人達に利用されて欲しくないんだ。だから、これから、何があっても、絶対にその力のことは教えてはいけないよ』
未来を予知出来る力。
この力が後に、私と国の未来を揺るがす大きな出来事を希望に変えていく為に使うことになることなど、この時の私はまだ思いもしなかった。
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父と母は、あの日、私に「他人に未来を予知出来る力を教えてはいけない」そう言ってくれた2週間後に、ティゼ村の長老であるベルディの元に私を預けて、二人は村から出て行った。
すぐ帰って来ると私は思っていたが、一向に帰って来る気配はなく、歳を重ねるにつれて、父と母は私を捨てたのだと気付いた。
しかし、そうではなかったことを17を迎える誕生日の日に知ることになる。
誕生日の日。
長老であるベルディから聞いた話しによると、父と母は私の13歳を迎える誕生日の日にあげる予定であったプレゼントを選びに、王都に向かい出掛けたらしい。
けれど、王都に行く途中で、運悪く賊に出くわし、殺された。父と母は私を捨てたのではなかった。ちゃんと愛してくれていた。そうわかった時、私の心の奥底にあった蟠りは溶けるように消えてなくなったのだ。
長老のベルディは幼い私に伝えるには心に傷を作るだろうと判断し、伝えても大丈夫だと思える年齢になるまで、黙っていたようだ。
そして、今日、私はまた歳を一つ重ねる18の誕生日を迎えた。
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「アリア、18歳の誕生日おめでとう」
「はい! ありがとうございます。ベルディ長老」
ティゼ村の長老であるベルディに呼び出されたアリアは村の端に建つ長老が住まう家に来ていた。ベルディは今年で79歳となる年老いた老人であるが、老いを感じさせない程、元気である。
「しかし、早いものだな。もう、18であるか」
「ベルディ長老、去年は両親のことを話して下さりありがとうございました。私はずっと父と母に捨てられたのだと思っていたので」
「ああ、申し訳ないな。私はアリア、お前のことを思って言えなかったが、もっと早く言うべきこであった」
ベルディはそう言い、部屋の窓から見える晴れた空を見上げて、懐かしむように呟く。
「今でも悔いているんだ。あの日、私が村の外に出ることを許可していなかったら、アリア、お前の両親が賊に襲われることもなかったかもしれない」
「そうかもしれないですが、両親が亡くなってから心を閉ざしていた私の側にいて寄り添ってくれたのは長老でした。私はこれから、父と母の分も精一杯、生きていくので、もう大丈夫です」
ベルディはアリアの両親が亡くなってから、アリアを自分の子供のように育ててきた。
アリアにとってベルディは親のような存在でもある。
「ああ、それなら良いのだが。あ、そうであった! アリア、お前に頼みたいことがあったんだ」
「頼みたいことですか?」
「ああ、お前に王都に行ってきてもらいたいのだ」


