ヴァルローゼ国へと着いたアディとシェラは港から王都行きの馬車に乗り王都へと向かう。

「帰って来たのね、私」

 馬車に揺られながらシェラは馬車の窓から見える外の風景を眺めている。
 隣に座るアディはそんなシェラを横目に見つめていた。



 シェラとアディを乗せた馬車は王都に着き、シェラとアディは歩いて王城へと向かう為、馬車から降りる。

「懐かしい風景ね。少し昔とは景色が変わってしまったみたいだけれど」

  馬車から降りたシェラは王都の景色を青色の瞳に映す。王都は人々の声で溢れ、賑わっていた。
 シェラとアディはそんな王都の道を歩き始める。

「そういえば、俺の家、どうなったかなぁ……」
「アディの家? あ、あれから戻っていないものね」
「そうなんだよね、もしかしたら、もう売り払
われてるかもしれないな……」
「ごめんなさい、アディ」

 少しばかり申し訳ない気持ちになったシェラが謝罪すれば、アディは笑って首を横に振る。

「ううん、謝らなくていいよ。シェラは何も悪いことしてないんだから。それに、俺、引っ越そうとしてたから、あの家が売り払われてて、他の人が住んでいたとしても、気にしないから、大丈夫」
「そう、ならいいのだけど」

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 アディとシェラが城に着き、城の城門に立つ、二人の門番兵に名を告げると兵士である男の二人は驚いた顔をし、城の中へとアディとシェラを通し入れる。

「ちょっと待ってて下さい。リヴィアス陛下を呼んで参ります!」

 城門の門番兵の一人が慌てたようにそう言い、その場から走り去って行く。
 もう一人の門番兵の男は、走り去って行った兵士の姿を見送り、アディとシェラを交互に見る。

「シェラ王女殿下なのですか……?」

 兵士は確かめるようにもう一度問い掛けてくる。シェラは優しい微笑みを浮かべて、強く頷き返した。

「ええ、私はこのヴァルローゼ国の第一王女、シェラ・ティーナ・リシャロッテよ」
「よかった…… 本当によかった。生きておられたのですね」

 兵士の男は心配していたのか、シェラが帰って来たことに対して安堵していた。
 数分後、先程、走り去って行った兵士の男が、リヴィアスを連れて戻って来た。

「シェラ……!?」
「リヴィアス王子殿下、お久しぶりです」

 シェラは目の前に立つリヴィアスに頭を下げる。そして顔を上げたのと同時に、リヴィアスはシェラの手を掴み抱き寄せる。

「シェラ、私はお前に酷いことをしようとした。ヴァリアント王子殿下をシェラが殺したという報告を信じ込み、本当かどうかを調べるということをしなかった」
「ええ……」
「俺はシェラ、お前を捕まえて、罪を償わせる為に、お前を殺そうとしていた。許してくれと言えない程のことを俺はしたんだ」

 リヴィアスはシェラのことを強く抱き締めながら、そう告げた。シェラはリヴィアスに抱き締められながら、口を開く。

「私は、こうしてリヴィアス陛下、いいえ、お兄様と会えたことが、とても嬉しいの。お兄様が、私にしたことは消せないわ。けれどね、それは過去のことよ。もう過ぎ去ったことなの」
「シェラ……」
「一度、犯してしまった過ちは変えられないけれど、これからの未来は変えることができるわ。過去に囚われていては駄目だもの。私はこれから、お兄様のことを王女として支えていくわ。この国を良き国にしていきましょう」
 
 シェラはリヴィアスのことを責めるつもりもなければ、憎んでいる訳でもなかった。
 リヴィアスは、シェラの両方を優しく掴み、身体をそっと離す。

「ああ、ありがとう。そして、言い忘れていた。おかえり、シェラ」
「ええ、ただいま」

 そんな二人をアディと門番兵の男二人は、優しく見守るように見ていた。
 晴れた夏の空の下、シェラは今日という日を忘れないようにしようと強く心に誓ったのである。