リディリア伯爵家の長女。
 サリーナという人物に転生したことに気付いてから1週間が経った頃、私は父親に呼び出された。

「サリーナ、私の仕事の取引先の方からお前とお見合いをさせてほしいと言われてな。その、お前には早く子供を作ってほしいというのもあってお見合いしてくれないだろうか……?」
「お見合いですか……?」
「ああ、そうだ」

 好きでもない人と結婚する羽目になるのは絶対嫌であるが、お見合いをするだけならまだいいかと思ったサリーナは頷く。

「いいですよ。お見合いします」
「ああ、ありがとう、サリーナ」

***

父親と話終わり、自室へと戻ってきた私はベットまで足早に歩み寄り、白いふかふかのベットに倒れ込む。
 父親が言うにはお見合い相手は父親の仕事の取引先相手のご子息だそうだ。

「緊張するわね……」

***

 お見合い相手とのお見合い当日。
 私は緊張しながらお見合い相手が来るのを待った。
 
「失礼致します。遅くなって大変申し訳ございません」

 予定の時間よりも少し遅れて、お見合い相手である人物(セオドア・アリック)は事前に予約を取っていた個室の部屋に入るなり、申し訳なさそうな顔で謝罪をして頭を下げてくる。

「いえいえ、大丈夫ですよ」
「そうですか、それならいいのですが……」

 そこから私達は色々な話をした。
 お互いの仕事のこと、家族のこと。

「私、今すぐに結婚したい訳ではないんです。このお見合いも親に頼まれて来た感じなので。今日少し話しただけですが、セオドア様はとても素敵な方だと思います」

 だけど、私はまだ誰かと一緒になるということが考えられない。いつかは結婚したいなとは思っているがそれは今ではない。

「サリーナ様の気持ちはわかりました。わかった上でお聞きしたいのですが、サリーナ様は私のことを結婚相手として見れますか?」

 セオドア様の問いに私は首を横に降る。
 結婚相手としては申し分ないとは思うが、一緒にいて落ち着く相手であるかという点ではそうでもない気がした。

「ごめんなさい。結婚相手としては見れません。私は自分の時間を大切にしたいので結婚とかもまだ考えられません」
「そうですか、わかりました」

 セオドア様は私の思いを聞いて頷き、静かに立ち上がる。そして私を見て軽く会釈をしてから部屋から出て行った。

 部屋に残された私はため息をついてきちっとしていた姿勢を崩し、天井を見上げて脱力する。

「疲れたわね……」

 部屋の窓から見える空を見上げれば、空は茜色に染まりつつあった。