私がラクスの母親であるユアーネの病を治した日の夜。
 酒場の店主であるディゼットからも感謝され、手料理を振る舞われる。

「本当に良かったな、ラクス。俺からも感謝させてくれ、ありがとう」
「いえいえ、私は引き受けた仕事をこなしただけですから」

 私は茶色いテーブルの上に並べられたディゼットが作った料理に手をつけながら、目の前に座るユアーネとラクス。妹のリナを見る。

「にーなさん、おかあさんのびょうきを治してくれて、ありがとう」

 ラクスの妹であるリナはテーブル越しにそう言いぺこりと頭を下げてくる。
 私はそんなリナを見て優しく笑い返す。

「ええ、これからお兄ちゃんとお母さんと沢山、色々な所に行けるわよ」
「本当……!」
「ええ、」

 私の言葉にとても嬉しそうに笑い喜ぶリナを見て、リナの両隣に座るラクスとユアーネは優しく笑っていた。

 私はそんなユアーネ、ラクス、リナの姿を見て、ラクスからの頼みを引き受けてよかったと心から思ったのであった。



 翌日。
 私はラクスとユアーネ、リナ。酒場の店主であるディゼットに別れを告げてソルヴィーヌ国の空へと飛び立った。

 酒場の手伝いの仕事で稼いだお金とラクスの母親(ユアーネ)の病を治す薬代を合わせたら、当分はお金の心配はしなくて済むくらいには金銭に余裕はできた。

「どうか元気で。さようなら」

 私は少しずつ遠いていくラクス達の姿を空の上から見下ろしながら晴れた空の上で一人呟いた。