皆、誰かをいじめてる

 夢があった。
 やりたいことがあった。
 明るい未来を望んでた。
 そんなものがないと知ってから、もう生きている意味はない。
 ベッドの上で土下座なんかして、何をしているのだろう。
 声にならない叫びが部屋に虚しく響く。
 誰も見ていないのだ。
 もう、十分生きたじゃないか。
 疲れた。
 机にあったカッターを手に取る。
 刃を伸ばして、首元に当てた。
 震えることもない。
 思いの外、落ち着いている。
 終わりにしよう。
 勢いよく首元を切り付ける。
 血が飛び散って、意識が衰え、床に乱暴に倒れた。
 誰かに気づいて欲しいわけじゃない。
 ただ体の制御ができなかった。
 大きな物音に気づいた家族の誰かが階段を駆け上がっていく。
 全部終わったんだ。
 騒がしい声が部屋中に響いていた。
 目を閉じる。
 心はとても穏やかだった。

 村野虚は、高校三年生の夏休みの末に全てを捨てて自殺した。