春。桜。高校の入学式。全寮制。
……これは、これは、いいものが見れる大大大チャンスなのである! このときを逃しては行けないぞ俺。
スーツケースを右手に、寮が舞台の漫画を左手に興奮が鳴り止まない。
さっき迷子になりかけたけど、終わりよければなんでも良しってことで、やっと正門の前に着いた。まぁ真新しい制服は、案の定汚れたけど。
「おーっす。萌木じゃん」
「あ、あぁ……どうも」
同じく正門をくぐる一軍っぽい男の子に話しかけられるが、イマイチ顔にピンと来ない。
……え? 誰? 見た感じ俺と同じ中学だったのかな。なんも記憶ないんだけど、えぇ。しかも、なんか他にも見たことない人ばっかり。
もしかして、俺、この学園生活ぼっち確定!? いやいやいや。落ち着け萌木叶愛まだわからないじゃん。この学校には元々オタク友達でネッ友だった、一つ先輩の結城碧先輩がいるし。まぁ、なんとかなるでしょ。
それよりも、寮部屋のルームメイト誰だか気になるなぁ。えぇと、入学式が終わったら各自確認しに行く……か。じゃあ楽しみに取っておこうっと。
「それにしても薔薇ノ下学園……薔薇……」
BLの匂いがするぞ。
正門に書いてある学校名の文字を眺めながら、ふと思い出す。そういえば、この学校、付属大学があってそこにお兄ちゃ──いやあんな変人を兄だとは認識していない。──あいつも通っているとかなんとか。だから強引にこの学園に通わせたとか。まぁBLが見れるなら俺はなんでもいいけど。あいつが高校に遊びに来ない限り、世界平和は保たれる。
「ねぇあの人ヤバくない!?」
「え! アイドル?」
黄色い悲鳴が聞こえるような。せっかく沼に浸っていたのに。門の横から、女の子たちがまるでアイドルのライブかのように騒いでいるのが聞こえる。
「モデルさんみたい!」
えぇ……。そんなに? そんな漫画の攻めみたいな人実在するわけないでしょ。気になって、声がする方に振り向く。
「わぁまじ……」
顔はよく見えないけど、後ろ姿だけでモテるような予感。
勝手な偏見だけど、表はキラキラしている王子様キャラで、裏では受けにデレデレ甘々系な攻め。俺の性癖すぎる。
まぁ、ちゃんと見た訳じゃないからまだ確信したわけじゃないけど。いい感じのBLになってくれないかなぁなんて。またもやこの学園生活の妄想をしながら、推しと同じ腕時計を見る。
「あ、やば時間!!」
やってしまった。入学式早々遅刻することになる。
この時計は、好きなBLドラマの受けと攻めがペアでつけていた……ってぇぇ。時間本格的にやばいやつじゃん!
重いスーツケースを強引に引っ張りながら学校の中に入る。
わぁ……普通に漫画に出てきそうな人ばっかりだな。
あ。この人受けっぽい。あ、この人は攻め……? うーんリバでもいけるなぁ。
「なーに考えとるの!」
「うわっ……!?」
ボーッと考えていたら、後ろから誰かに抱きつかれた。振り向いた先には……知らない人がいた。普通怖いと感じる人が多いけど、俺にとっては日常茶飯事なのである。
えーと……誰だろう。全然わからない。校則違反ギリギリの金髪に、校則違反ギリギリの数のピアスを身にまとった陽気な男の子。申し訳ないのだが、俺はほぼ中学なんて年中……三年間ずっと不登校だったから、友達は少なかった。強いていえば、オタク友達とネッ友くらい。中学のときに、引きこもってずっとネットを見ていたから、今の俺があるわけで。出会えてよかったと心から思っている。
「なー聞いちょる? 式までもう少しあるし、クラス見に行かへん?」
本当に誰なんだ……。しかもなんか色んなとこの方言混じってる気がするんだけど。心の中で苦笑いする。
記憶を張り巡らすけど、俺の頭はいらない情報だけ全て排除しているらしく、中学の学校生活の記憶がほぼない。
どうしよ。今更名前聞くのも失礼だよね……。
「あー、すまんすまん。自己紹介まだやったね」
「え?」
……は? この人、中学の同級生じゃないの。よかった、失礼なこと聞かなくて。っじゃなくて! いやいやいや。なに、え。初対面ですよね? なんで普通に抱きついてきたり、ヘラヘラしてんの。
おかしいでしょ 。配慮ってものを知らないのかこの人は。怖い通り越して引いてきた。
「うち、結城紫音言うねん。自分は?」
なんなのこの人。ん? 待てよ。結城……結城ってまさか!
「碧くんの弟!?」
「おん。そうやけど。あいつの知り合いなん?」
まさか、腐男子仲間で一番の友達の弟がここの生徒で、しかも同級生だとは。碧くんに会う前に会っちゃった。さっき若干この人……紫音に引いていた気持ちは嬉しくて嬉しくて堪らなくなった。たまらずコクっと頷く。
「おーそうなんか。ほんなら、もう親友やな」
流石に気が早い。数秒前まで、失礼な人だと思っていたのに。俺ってこんなことで人を見る目が変わるなんて。ショックすぎる。まぁでも悪い子ではなさそうだ。
これからの学校生活が、少し変わりそうな予感。わくわくしながらクラス発表の掲示を見る。
「どう? 名前あった? うち二組やった」
「あ、同じだ」
ていうか、まだ紫音に名前教えてない。俺の方が失礼な気がしてきた。
同級生の波からなんとか脱出して、紫音の方へ行く。
「ご、ごめん。俺の名前、萌木叶愛」
こんな改まって自分の名前を言うとは。こんな感じで友達が出来るとは。ましてやこんな一軍陽キャの親友ができるなんて。早速碧くんに連絡しようかな。
「おー! ええ名前やないか。なら、入学式行こか」
いい名前なのか? 若干不安を感じるけど、嬉しそうだからいいか。
「うん!」
入学式……そう、これは高校生活のはじめの一歩。ということは、たくさんの出会いや、一目惚れ回があるはず。運命的な出会いのシーンを、間近で見るのだ。俺はこんなチャンスを逃しては行けない。絶対に、BLを見つけてやる。そのために、この学校に来たのだから。
『えー新入生のみなさん。ご入学おめでとうございます。今日は快晴で──』
今俺は、とても苦難な試練を乗り越えている。そう。校長の話がとてつもなく長いのである。すごく眠たいし、ずっと立たされているから疲れてきた。せめて座らせてくれないか?
はやく寮に行きたいのに。それに加えて、前に立っている人がすごく背が高くて校長の方がなにも見えない。実質声しか聞いていないのである。一番最悪なやつだ。
それにしても前の人、さっき正門のところで見たような。スタイルいいし、顔が見たくてしょうがない。攻めみたいな顔してたら即推そう。
『一同、着席』
あーもう足ダメ……。俺体力ないのよ。推しカプを見る体力しかない。あ、それは体力じゃないわ。なんだっけな。
「萌木くん。萌木くん。着席やで?」
「えっ。……うわっ!?」
紫音に呼ばれて、声がひっくり返ってしまった。ボーッとしてた俺が悪いんだけど……。
しかも、なんか周りの人たちみんな見てるし。幸いなことに、近くの人にしかバレなかったので、騒動にはならなそうだ。いや、幸いでもないけど。
まぁあのまま立っていたら目立ちすぎていただろうし、紫音には一応お礼を言っておこう。小声で隣の席の紫音に「ありがと」と言う。
心底最悪の気分だが。
「……ふっ」
え? 前の方で、誰かが笑ったのがわかった。最悪だ。
でも……今、すごい攻めの香りがただよっている。 いや、これは攻めでもなさそうだ。
前の席が動いたかと思えば、こちらに振り向いて可笑しそうに微笑んでいるイケメンが。やっぱりこの子……。
ずっと後ろ姿しか見ていなかった彼の顔を、今初めて見た。
……どうしよう。やばい。なんというか、思っていた以上に顔が良すぎる。かわいい。えかわいい……。一瞬だったけど見逃さなかった。お目目がすごい大きくてまつ毛も長いし、肌白い、それに加えて顔が小さすぎ案件。顔面偏差値熊谷越えなんですが。黒髪のサラサラストレートに、女子顔負けの美貌。制服は俺みたいに着崩していなく、きっちりと着ていて紫音みたいにピアスもしていなく、というかピアス穴も開いてなくて優等生っぽい。……この一瞬でここまで見えたの俺天才すぎないか。容姿が整いすぎている。これで眼鏡をしていたら完璧すぎるんだけどな。
「萌木く~ん? ちょいと大丈夫か?……あかん、違う世界に行ってしもうた」
隣で紫音の声がするけど、それどころじゃなかった。
「やばい」
これ、一目惚れというやつでは? あんなにすらっとしているのに、顔は女の子みたいにかわいい。鈍感で恋に疎い。知らぬ間に守られていることにも、独占されているのにも最後まで気づかない。こんなシチュエーションに遭っていそうで。うん、これはもう。
目が合った瞬間に確信した。この子は、前にいるイケメ……ゆるかわは、かんっぜんに! ”受けだ!!”
生まれて初めて、リアルで完璧すぎる受けを見つけてしまった。まるで本当に漫画に出てきそうなくらい、激かわ。大人しく攻めちゃんに抱かれてくださいまし。
名前、知りたいな……。あでも同じクラスだからこれからチャンスは存分にあるぞ。……勝った。
これだけかわいかったら、絶対攻めは独占欲強めの俺様キャラだろうな。くぅぅ! 最高。間近で見てみたいものだぜ。
「はは……あははは」
「ほんまに大丈夫なんか……? まだ式終わってないで」
最悪の学園生活は、最高に変わるかもしれない。まだ目が合っただけだが、これから距離を縮め……いや見守るだけでも充分だけど、仲良くなれば、もっと深く知れるかもしれない。漫画などではわからないことが。神すぎる。
そしてまた俺は、腐心をパワーアップするのである。天才的な計画だ。それでこそ萌木叶愛。
人生初、リアルの推しができました。ここの学校に来てあたりすぎた。碧くんに早く教えたいな。
……これは、これは、いいものが見れる大大大チャンスなのである! このときを逃しては行けないぞ俺。
スーツケースを右手に、寮が舞台の漫画を左手に興奮が鳴り止まない。
さっき迷子になりかけたけど、終わりよければなんでも良しってことで、やっと正門の前に着いた。まぁ真新しい制服は、案の定汚れたけど。
「おーっす。萌木じゃん」
「あ、あぁ……どうも」
同じく正門をくぐる一軍っぽい男の子に話しかけられるが、イマイチ顔にピンと来ない。
……え? 誰? 見た感じ俺と同じ中学だったのかな。なんも記憶ないんだけど、えぇ。しかも、なんか他にも見たことない人ばっかり。
もしかして、俺、この学園生活ぼっち確定!? いやいやいや。落ち着け萌木叶愛まだわからないじゃん。この学校には元々オタク友達でネッ友だった、一つ先輩の結城碧先輩がいるし。まぁ、なんとかなるでしょ。
それよりも、寮部屋のルームメイト誰だか気になるなぁ。えぇと、入学式が終わったら各自確認しに行く……か。じゃあ楽しみに取っておこうっと。
「それにしても薔薇ノ下学園……薔薇……」
BLの匂いがするぞ。
正門に書いてある学校名の文字を眺めながら、ふと思い出す。そういえば、この学校、付属大学があってそこにお兄ちゃ──いやあんな変人を兄だとは認識していない。──あいつも通っているとかなんとか。だから強引にこの学園に通わせたとか。まぁBLが見れるなら俺はなんでもいいけど。あいつが高校に遊びに来ない限り、世界平和は保たれる。
「ねぇあの人ヤバくない!?」
「え! アイドル?」
黄色い悲鳴が聞こえるような。せっかく沼に浸っていたのに。門の横から、女の子たちがまるでアイドルのライブかのように騒いでいるのが聞こえる。
「モデルさんみたい!」
えぇ……。そんなに? そんな漫画の攻めみたいな人実在するわけないでしょ。気になって、声がする方に振り向く。
「わぁまじ……」
顔はよく見えないけど、後ろ姿だけでモテるような予感。
勝手な偏見だけど、表はキラキラしている王子様キャラで、裏では受けにデレデレ甘々系な攻め。俺の性癖すぎる。
まぁ、ちゃんと見た訳じゃないからまだ確信したわけじゃないけど。いい感じのBLになってくれないかなぁなんて。またもやこの学園生活の妄想をしながら、推しと同じ腕時計を見る。
「あ、やば時間!!」
やってしまった。入学式早々遅刻することになる。
この時計は、好きなBLドラマの受けと攻めがペアでつけていた……ってぇぇ。時間本格的にやばいやつじゃん!
重いスーツケースを強引に引っ張りながら学校の中に入る。
わぁ……普通に漫画に出てきそうな人ばっかりだな。
あ。この人受けっぽい。あ、この人は攻め……? うーんリバでもいけるなぁ。
「なーに考えとるの!」
「うわっ……!?」
ボーッと考えていたら、後ろから誰かに抱きつかれた。振り向いた先には……知らない人がいた。普通怖いと感じる人が多いけど、俺にとっては日常茶飯事なのである。
えーと……誰だろう。全然わからない。校則違反ギリギリの金髪に、校則違反ギリギリの数のピアスを身にまとった陽気な男の子。申し訳ないのだが、俺はほぼ中学なんて年中……三年間ずっと不登校だったから、友達は少なかった。強いていえば、オタク友達とネッ友くらい。中学のときに、引きこもってずっとネットを見ていたから、今の俺があるわけで。出会えてよかったと心から思っている。
「なー聞いちょる? 式までもう少しあるし、クラス見に行かへん?」
本当に誰なんだ……。しかもなんか色んなとこの方言混じってる気がするんだけど。心の中で苦笑いする。
記憶を張り巡らすけど、俺の頭はいらない情報だけ全て排除しているらしく、中学の学校生活の記憶がほぼない。
どうしよ。今更名前聞くのも失礼だよね……。
「あー、すまんすまん。自己紹介まだやったね」
「え?」
……は? この人、中学の同級生じゃないの。よかった、失礼なこと聞かなくて。っじゃなくて! いやいやいや。なに、え。初対面ですよね? なんで普通に抱きついてきたり、ヘラヘラしてんの。
おかしいでしょ 。配慮ってものを知らないのかこの人は。怖い通り越して引いてきた。
「うち、結城紫音言うねん。自分は?」
なんなのこの人。ん? 待てよ。結城……結城ってまさか!
「碧くんの弟!?」
「おん。そうやけど。あいつの知り合いなん?」
まさか、腐男子仲間で一番の友達の弟がここの生徒で、しかも同級生だとは。碧くんに会う前に会っちゃった。さっき若干この人……紫音に引いていた気持ちは嬉しくて嬉しくて堪らなくなった。たまらずコクっと頷く。
「おーそうなんか。ほんなら、もう親友やな」
流石に気が早い。数秒前まで、失礼な人だと思っていたのに。俺ってこんなことで人を見る目が変わるなんて。ショックすぎる。まぁでも悪い子ではなさそうだ。
これからの学校生活が、少し変わりそうな予感。わくわくしながらクラス発表の掲示を見る。
「どう? 名前あった? うち二組やった」
「あ、同じだ」
ていうか、まだ紫音に名前教えてない。俺の方が失礼な気がしてきた。
同級生の波からなんとか脱出して、紫音の方へ行く。
「ご、ごめん。俺の名前、萌木叶愛」
こんな改まって自分の名前を言うとは。こんな感じで友達が出来るとは。ましてやこんな一軍陽キャの親友ができるなんて。早速碧くんに連絡しようかな。
「おー! ええ名前やないか。なら、入学式行こか」
いい名前なのか? 若干不安を感じるけど、嬉しそうだからいいか。
「うん!」
入学式……そう、これは高校生活のはじめの一歩。ということは、たくさんの出会いや、一目惚れ回があるはず。運命的な出会いのシーンを、間近で見るのだ。俺はこんなチャンスを逃しては行けない。絶対に、BLを見つけてやる。そのために、この学校に来たのだから。
『えー新入生のみなさん。ご入学おめでとうございます。今日は快晴で──』
今俺は、とても苦難な試練を乗り越えている。そう。校長の話がとてつもなく長いのである。すごく眠たいし、ずっと立たされているから疲れてきた。せめて座らせてくれないか?
はやく寮に行きたいのに。それに加えて、前に立っている人がすごく背が高くて校長の方がなにも見えない。実質声しか聞いていないのである。一番最悪なやつだ。
それにしても前の人、さっき正門のところで見たような。スタイルいいし、顔が見たくてしょうがない。攻めみたいな顔してたら即推そう。
『一同、着席』
あーもう足ダメ……。俺体力ないのよ。推しカプを見る体力しかない。あ、それは体力じゃないわ。なんだっけな。
「萌木くん。萌木くん。着席やで?」
「えっ。……うわっ!?」
紫音に呼ばれて、声がひっくり返ってしまった。ボーッとしてた俺が悪いんだけど……。
しかも、なんか周りの人たちみんな見てるし。幸いなことに、近くの人にしかバレなかったので、騒動にはならなそうだ。いや、幸いでもないけど。
まぁあのまま立っていたら目立ちすぎていただろうし、紫音には一応お礼を言っておこう。小声で隣の席の紫音に「ありがと」と言う。
心底最悪の気分だが。
「……ふっ」
え? 前の方で、誰かが笑ったのがわかった。最悪だ。
でも……今、すごい攻めの香りがただよっている。 いや、これは攻めでもなさそうだ。
前の席が動いたかと思えば、こちらに振り向いて可笑しそうに微笑んでいるイケメンが。やっぱりこの子……。
ずっと後ろ姿しか見ていなかった彼の顔を、今初めて見た。
……どうしよう。やばい。なんというか、思っていた以上に顔が良すぎる。かわいい。えかわいい……。一瞬だったけど見逃さなかった。お目目がすごい大きくてまつ毛も長いし、肌白い、それに加えて顔が小さすぎ案件。顔面偏差値熊谷越えなんですが。黒髪のサラサラストレートに、女子顔負けの美貌。制服は俺みたいに着崩していなく、きっちりと着ていて紫音みたいにピアスもしていなく、というかピアス穴も開いてなくて優等生っぽい。……この一瞬でここまで見えたの俺天才すぎないか。容姿が整いすぎている。これで眼鏡をしていたら完璧すぎるんだけどな。
「萌木く~ん? ちょいと大丈夫か?……あかん、違う世界に行ってしもうた」
隣で紫音の声がするけど、それどころじゃなかった。
「やばい」
これ、一目惚れというやつでは? あんなにすらっとしているのに、顔は女の子みたいにかわいい。鈍感で恋に疎い。知らぬ間に守られていることにも、独占されているのにも最後まで気づかない。こんなシチュエーションに遭っていそうで。うん、これはもう。
目が合った瞬間に確信した。この子は、前にいるイケメ……ゆるかわは、かんっぜんに! ”受けだ!!”
生まれて初めて、リアルで完璧すぎる受けを見つけてしまった。まるで本当に漫画に出てきそうなくらい、激かわ。大人しく攻めちゃんに抱かれてくださいまし。
名前、知りたいな……。あでも同じクラスだからこれからチャンスは存分にあるぞ。……勝った。
これだけかわいかったら、絶対攻めは独占欲強めの俺様キャラだろうな。くぅぅ! 最高。間近で見てみたいものだぜ。
「はは……あははは」
「ほんまに大丈夫なんか……? まだ式終わってないで」
最悪の学園生活は、最高に変わるかもしれない。まだ目が合っただけだが、これから距離を縮め……いや見守るだけでも充分だけど、仲良くなれば、もっと深く知れるかもしれない。漫画などではわからないことが。神すぎる。
そしてまた俺は、腐心をパワーアップするのである。天才的な計画だ。それでこそ萌木叶愛。
人生初、リアルの推しができました。ここの学校に来てあたりすぎた。碧くんに早く教えたいな。

