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大講堂に来たのは入学式以来だ。あの日は出会ったばかりでただただ怖いという印象だったクイニーと二人、ボックス席に座り入学式に出席した。恐怖や緊張に加え、この世界の事も何も知らない状態で学園に通うことになり漠然とした不安ばかり抱えていた。
まだあの日から大して時間も経っていないのに、こう思えるのは少しでもこの世界に慣れてきた証拠だろう。
大講堂に入ると、あの日のようにクイニーに続いて階段を上がろうとする。だが後ろを振り向くと、ミンスとザックは一階の扉から講堂内に入ろうとしている。
「二人は上に来ないの?」
「私達は子爵家の息子ですから。ボックス席に私達の席は用意されていないんです」
「アンリちゃん、また後でね」
そんな当たり前の様に二人は笑うが、アンリの心はモヤついてしまう。友達同士なのに、階級云々で一緒に居られないのかと思うと、そう言う意味ではこの世界にまだ慣れる事は出来ない。
アンリがそんな風に思っていると、前を歩いていたはずのクイニーが二人の元まで歩いていく。そしてミンスとザックの背中を押す。
「お前らも来い」
「だが…」
「いいんだ。俺とアンリでボックス席を使っても席は空いているんだ。それに俺が決めたことだ。文句でもあるのか?」
「クイニーがそう言ってくれるなら…、なぁミンス」
「うん!ありがとう」
ボックス席に入ってしまえば、再び四人だけの空間になる。ここは他の人の目を気にせずに話せるし、居心地が良い。一階席の方を見下ろしてみれば、まだ時間があるからかチラチラと学生が集まっている程度だ。
アンリの隣に座るクイニーは静かに足と腕を組み座っている。そんな彼とは対照的にミンスはキョロキョロと周囲を見渡しては感動の声を上げる。
「うわぁ、やっぱりボックス席って広いし、座り心地が良いんだね。まさかボトルまで用意されているなんて、至れり尽くせり」
「確かに一階席は肘掛けがあるくらいだからな。しかも時々、隣に座る奴が肘をぶつけてくる」
「うんうん。…ねぇ待って、ザックっていつも端の席に座りたがるから、その肘が当たるって僕の事じゃん!」
「そうだが?」
「もぉザックの意地悪。僕とザックの仲じゃん」
「それでも迷惑なものは迷惑だ」
そんなやり取りをアンリは苦笑いで眺める。
これから行なわれる授業は貴族階級必修の観覧という授業だ。この授業ではその名の通り、演劇や歌、オペラを見るのが主だ。舞台に立つのは時々有名な劇団を呼ぶこともあるようだが、基本は二年生以降の学生だ。
この学園では勉学はもちろんのこと、芸術面に力を入れているようで、一年次からこうしてたくさんの芸術に触れ合い、二年次からは自分の興味ある選択科目を選ぶ事になっている。
選択科目には演劇や歌、オペラなど実際に舞台に立つ授業もあれば、絵画や彫刻と言った一人で黙々と作品を制作するものまであるらしい。
確か今日観るのは演劇だ。
演劇と聞くと少しソワソワするような、どこか嬉しい感覚に包まれる。というのも、暗璃として生活していた頃、中学の部活動では演劇部に所属し音響担当のチーフまで務めた過去がある。
初めは中学校のほぼ強制で入部しなければならない部活動。運動が苦手な暗璃の選択肢なんて文化部の演劇部と吹奏楽部しか無かった。そのため流れで入部する事になったのだが、それでも暗璃にとって珍しく良い思い出として残っている日々だ。だから懐かしいような、不思議とあの時の緊張感まで思い出すのだ。
大講堂に来たのは入学式以来だ。あの日は出会ったばかりでただただ怖いという印象だったクイニーと二人、ボックス席に座り入学式に出席した。恐怖や緊張に加え、この世界の事も何も知らない状態で学園に通うことになり漠然とした不安ばかり抱えていた。
まだあの日から大して時間も経っていないのに、こう思えるのは少しでもこの世界に慣れてきた証拠だろう。
大講堂に入ると、あの日のようにクイニーに続いて階段を上がろうとする。だが後ろを振り向くと、ミンスとザックは一階の扉から講堂内に入ろうとしている。
「二人は上に来ないの?」
「私達は子爵家の息子ですから。ボックス席に私達の席は用意されていないんです」
「アンリちゃん、また後でね」
そんな当たり前の様に二人は笑うが、アンリの心はモヤついてしまう。友達同士なのに、階級云々で一緒に居られないのかと思うと、そう言う意味ではこの世界にまだ慣れる事は出来ない。
アンリがそんな風に思っていると、前を歩いていたはずのクイニーが二人の元まで歩いていく。そしてミンスとザックの背中を押す。
「お前らも来い」
「だが…」
「いいんだ。俺とアンリでボックス席を使っても席は空いているんだ。それに俺が決めたことだ。文句でもあるのか?」
「クイニーがそう言ってくれるなら…、なぁミンス」
「うん!ありがとう」
ボックス席に入ってしまえば、再び四人だけの空間になる。ここは他の人の目を気にせずに話せるし、居心地が良い。一階席の方を見下ろしてみれば、まだ時間があるからかチラチラと学生が集まっている程度だ。
アンリの隣に座るクイニーは静かに足と腕を組み座っている。そんな彼とは対照的にミンスはキョロキョロと周囲を見渡しては感動の声を上げる。
「うわぁ、やっぱりボックス席って広いし、座り心地が良いんだね。まさかボトルまで用意されているなんて、至れり尽くせり」
「確かに一階席は肘掛けがあるくらいだからな。しかも時々、隣に座る奴が肘をぶつけてくる」
「うんうん。…ねぇ待って、ザックっていつも端の席に座りたがるから、その肘が当たるって僕の事じゃん!」
「そうだが?」
「もぉザックの意地悪。僕とザックの仲じゃん」
「それでも迷惑なものは迷惑だ」
そんなやり取りをアンリは苦笑いで眺める。
これから行なわれる授業は貴族階級必修の観覧という授業だ。この授業ではその名の通り、演劇や歌、オペラを見るのが主だ。舞台に立つのは時々有名な劇団を呼ぶこともあるようだが、基本は二年生以降の学生だ。
この学園では勉学はもちろんのこと、芸術面に力を入れているようで、一年次からこうしてたくさんの芸術に触れ合い、二年次からは自分の興味ある選択科目を選ぶ事になっている。
選択科目には演劇や歌、オペラなど実際に舞台に立つ授業もあれば、絵画や彫刻と言った一人で黙々と作品を制作するものまであるらしい。
確か今日観るのは演劇だ。
演劇と聞くと少しソワソワするような、どこか嬉しい感覚に包まれる。というのも、暗璃として生活していた頃、中学の部活動では演劇部に所属し音響担当のチーフまで務めた過去がある。
初めは中学校のほぼ強制で入部しなければならない部活動。運動が苦手な暗璃の選択肢なんて文化部の演劇部と吹奏楽部しか無かった。そのため流れで入部する事になったのだが、それでも暗璃にとって珍しく良い思い出として残っている日々だ。だから懐かしいような、不思議とあの時の緊張感まで思い出すのだ。

