四人法

 ―――さやかには彼氏がいた。

 私より三つ年上の職場の先輩。

 二十五歳のさやかはその彼氏のことが本当に好きだった。

 その気持ちは間違えなく本物だ。

 だけど、ただ友達である女性と一緒にいるだけで疑われてしまうなんて。

「あの子は私の友達。今はあんたと恋愛関係にあるの。これでも信じられないの!」

 さやかは彼氏が自分を信じてくれないことにショックを受けていた。

「お前がバイってことは付き合う前から聞いてた。俺を愛してくれてる。それだけでよかった。でも……誰かと仲良くしているだけで俺、気が気じゃなくなった。さやかは楽しかっただろ?」

 彼氏は大きな口を開け、さやかの鼻に唾が飛ぶほどの勢いで叫んでいた。

 人前だというのに、こんなにも乱暴に人を侮辱するなんて――

 私は、なんでこんな人と付き合ったんだっけ。

 彼氏が一方的に罵声を浴びせてくる中で、さやかは全く別のことを考えていた。

 ――はぁ、どうしよう。

 何を言っても、きっと聞く気なんてないんだ。

 彼氏はさやかの言葉よりも自分が正しいことを証明しようとするばかりだった。

 さやかは眉をひそめ、そんな彼氏に両肩を強くつかまれる。

「離して! ちょっと…」

 さやかは彼氏の片腕をつかみ、強く振りほどうこととした。

 喫茶店の入り口で口論していたため、道を歩く人たちがちらりとこちらを見る。

 けれど、誰ともかかわろうとはしない。