*
三年前の拓は、今と変わらず、塾講師をしていた。
いつも通りに、生徒たちに教えたり、事務仕事などをこなしていた。
ある日、突然だった。
数学の授業を終えて、職員室に入ったときに同僚から声を掛けられた。
「拓先生。お電話です。警察からご連絡きてます」
同僚は、慌てていた。
不思議に思い、首を傾げて、電話を取った。
「はい。お電話かわりました。青木塾の高橋(たかはし)です」
「…警察署です。こちら、砂沙美(ささみ)さんの旦那様でしょうか?」
「はい、そうですが……なにかありましたか?」
「奥様が交通事故に遭われまして、今、病院にいます。詳しくはまだ分からないのですが……
浅見病院に運ばれました。旦那様、今から向かうことは…できますか? 聞こえてますか?」
警察署の電話には、浅見病院に運ばれたところからもう聞いていない。
すぐ飛び出して、拓は「お疲れ様でした。失礼します。話はあとでします」と言い、病院に向かった。
急いで自分の車に乗り、浅見病院に向かった。
早く、早く。
そう思う時ほど、赤信号が多い。
「早く! 砂沙美! 早く!」
拓はハンドルを両手で持ち、バンッと叩きつける。
青信号に変わると、すぐ運転を再開する。
十分後
浅見病院に着き、駐車券を取り、車を止めた。
すぐ、病院の受付に行き、「高橋砂沙美はどこですか?」と息切れをして聞いた。
「はい、お待ちください。今、問い合わせしますので」
「早くしてください!」
受付に声を荒げた。
「お待たせしました。高橋様は三階にいます」
「…ありがとうございます」
拓はお礼を言った後、猛ダッシュで駆けだした。
早く、早く。どうか、無事でいてくれ。
砂沙美。僕はまだ何もできていない。
砂沙美とは結婚して、今日がちょうど三年目だった。
なんで、こんな時に……なんで?
「ここに高橋砂沙美はいますでしょうか?」
「はい。こちらになります。今、処置室にいらっしゃいます。こちらです」
女性の看護師はすぐ拓を処置室に案内した。
急いで駆け足で、処置室に向かった。
「高橋砂沙美さんはこちらです、どうぞ」
看護師は急いで、案内をして、拓は処置室に入った。
「高橋砂沙美さんの旦那様でしょうか?」
医者が拓の存在に気付き、声を出した。
「はい」
「手を尽くしましたが、お亡くなりになりました。ご冥福をお祈りします」
医者は深くお辞儀をして、言葉にした。
「なんで、妻は亡くならないといけなかったんですか? な、なにがあったんですか?」
拓は拳を握りしめてから、医者に言う。
「買い物していたそうです。駐車場を止めてから、すぐにスピードを出してきた車にぶつかったそうです」
淡々と医者は拓に話し始める。
「どこで買い物をしてたんですか?」
拓は座り込み、目の前にいる医者に問いかける。
「……井村スーパーです」
井村スーパーは僕たちがお気に入りのところで、ここのシュークリームが美味しくて、結婚記念日は必ずここで買う。
「奥様が最後に連絡したのは旦那様だそうです。確認されましたか?」
「連絡?」
すぐ拓はスマホを取り出して、メッセージ履歴を確認した。
そこには砂沙美からの一通の電話とメッセージだった。
僕は愕然とした。
まずは、電話の通知を押した。
「拓。結婚記念日三年目になったね。結婚してからはさ、ゆっくりしようねって言ったのに。全然、出来なかったね。でも、この記念日だけはゆっくりと過ごせるから、私、意外と楽しみにしてるんだよ。知らなかったでしょ? 楽しみにしてるように見えなかったからね。わざと、見えないようにしてたんだよ。アハハ、アハハ。ねぇ、拓。これからもよろしくね。じゃあ、いつもの買って帰るね」
優しくて、たまに冷たいのに頼もしい。
猫みたいに、ニャーと対抗してくるときもあれば、ご機嫌なときがある。
よく分からないときもあるが、一緒にいて楽しい。
冗談を言ったり、何気ないことを話をして、嫌になったことはない。
そんな人が、亡くなった?
メッセージをタップしたら、一言書かれていた。
『ありがとう、いつも』
「砂沙美、砂沙美!」
スマホを両手で握りしめて、縮こまった。
「奥様の最後、顔見せてあげてください」
医者は拓に言い、拓は顔を上げて、ユラユラと砂沙美のところへ駆け寄った。
「……砂沙美。ねぇ、嘘だよね。電話聞いたよ。僕、ここにいるよ。帰るよ。ねぇ、砂沙美。起きて」
砂沙美の身体を揺らして、起きさせる。
それでも、起きない。
「ねぇ、砂沙美!」
拓はまた砂沙美の身体を揺らす。
起きない。
「……砂沙美……」
拓は膝を折り曲げて、座り込む。
「旦那様。奥様はお亡くなりになっています」
医者は淡々と状況を説明する。
「分かってますよ!」
拓は涙を拭いながら、医者に怒り口調で言う。
「…少し、二人でいさせてください」
ため息を吐いてから、拓は自分を落ち着かせてから医者たちに伝えた。
「分かりました」
そう言って、医者たちは出て行った。
三年前の拓は、今と変わらず、塾講師をしていた。
いつも通りに、生徒たちに教えたり、事務仕事などをこなしていた。
ある日、突然だった。
数学の授業を終えて、職員室に入ったときに同僚から声を掛けられた。
「拓先生。お電話です。警察からご連絡きてます」
同僚は、慌てていた。
不思議に思い、首を傾げて、電話を取った。
「はい。お電話かわりました。青木塾の高橋(たかはし)です」
「…警察署です。こちら、砂沙美(ささみ)さんの旦那様でしょうか?」
「はい、そうですが……なにかありましたか?」
「奥様が交通事故に遭われまして、今、病院にいます。詳しくはまだ分からないのですが……
浅見病院に運ばれました。旦那様、今から向かうことは…できますか? 聞こえてますか?」
警察署の電話には、浅見病院に運ばれたところからもう聞いていない。
すぐ飛び出して、拓は「お疲れ様でした。失礼します。話はあとでします」と言い、病院に向かった。
急いで自分の車に乗り、浅見病院に向かった。
早く、早く。
そう思う時ほど、赤信号が多い。
「早く! 砂沙美! 早く!」
拓はハンドルを両手で持ち、バンッと叩きつける。
青信号に変わると、すぐ運転を再開する。
十分後
浅見病院に着き、駐車券を取り、車を止めた。
すぐ、病院の受付に行き、「高橋砂沙美はどこですか?」と息切れをして聞いた。
「はい、お待ちください。今、問い合わせしますので」
「早くしてください!」
受付に声を荒げた。
「お待たせしました。高橋様は三階にいます」
「…ありがとうございます」
拓はお礼を言った後、猛ダッシュで駆けだした。
早く、早く。どうか、無事でいてくれ。
砂沙美。僕はまだ何もできていない。
砂沙美とは結婚して、今日がちょうど三年目だった。
なんで、こんな時に……なんで?
「ここに高橋砂沙美はいますでしょうか?」
「はい。こちらになります。今、処置室にいらっしゃいます。こちらです」
女性の看護師はすぐ拓を処置室に案内した。
急いで駆け足で、処置室に向かった。
「高橋砂沙美さんはこちらです、どうぞ」
看護師は急いで、案内をして、拓は処置室に入った。
「高橋砂沙美さんの旦那様でしょうか?」
医者が拓の存在に気付き、声を出した。
「はい」
「手を尽くしましたが、お亡くなりになりました。ご冥福をお祈りします」
医者は深くお辞儀をして、言葉にした。
「なんで、妻は亡くならないといけなかったんですか? な、なにがあったんですか?」
拓は拳を握りしめてから、医者に言う。
「買い物していたそうです。駐車場を止めてから、すぐにスピードを出してきた車にぶつかったそうです」
淡々と医者は拓に話し始める。
「どこで買い物をしてたんですか?」
拓は座り込み、目の前にいる医者に問いかける。
「……井村スーパーです」
井村スーパーは僕たちがお気に入りのところで、ここのシュークリームが美味しくて、結婚記念日は必ずここで買う。
「奥様が最後に連絡したのは旦那様だそうです。確認されましたか?」
「連絡?」
すぐ拓はスマホを取り出して、メッセージ履歴を確認した。
そこには砂沙美からの一通の電話とメッセージだった。
僕は愕然とした。
まずは、電話の通知を押した。
「拓。結婚記念日三年目になったね。結婚してからはさ、ゆっくりしようねって言ったのに。全然、出来なかったね。でも、この記念日だけはゆっくりと過ごせるから、私、意外と楽しみにしてるんだよ。知らなかったでしょ? 楽しみにしてるように見えなかったからね。わざと、見えないようにしてたんだよ。アハハ、アハハ。ねぇ、拓。これからもよろしくね。じゃあ、いつもの買って帰るね」
優しくて、たまに冷たいのに頼もしい。
猫みたいに、ニャーと対抗してくるときもあれば、ご機嫌なときがある。
よく分からないときもあるが、一緒にいて楽しい。
冗談を言ったり、何気ないことを話をして、嫌になったことはない。
そんな人が、亡くなった?
メッセージをタップしたら、一言書かれていた。
『ありがとう、いつも』
「砂沙美、砂沙美!」
スマホを両手で握りしめて、縮こまった。
「奥様の最後、顔見せてあげてください」
医者は拓に言い、拓は顔を上げて、ユラユラと砂沙美のところへ駆け寄った。
「……砂沙美。ねぇ、嘘だよね。電話聞いたよ。僕、ここにいるよ。帰るよ。ねぇ、砂沙美。起きて」
砂沙美の身体を揺らして、起きさせる。
それでも、起きない。
「ねぇ、砂沙美!」
拓はまた砂沙美の身体を揺らす。
起きない。
「……砂沙美……」
拓は膝を折り曲げて、座り込む。
「旦那様。奥様はお亡くなりになっています」
医者は淡々と状況を説明する。
「分かってますよ!」
拓は涙を拭いながら、医者に怒り口調で言う。
「…少し、二人でいさせてください」
ため息を吐いてから、拓は自分を落ち着かせてから医者たちに伝えた。
「分かりました」
そう言って、医者たちは出て行った。



