暖は足を踏み出し、学校へ向かった。
学校での暖のポジションは目立つこともなく、特に存在感があるわけでもなかった。
少し前までは彼氏がいたが、別れてしまった。
理由は四人のことを話したからだった。
もっと早く話しておけばよかった。
付き合って三か月後が経った頃に話した結果、「理解できない」と言われて、破局した。
悲しさや寂しさよりも、むしろ安心している自分だった。
本当の好きな人が、別にいる――それもずっと。
高校一年時からずっと好きだった。
好きでもない人と付き合えば、その気持ちは消えると思っていたが、それは間違いだった。
好きな人は同じクラスの芳樹(よしき)だ。
唯一、自然体で接することができる存在。
友人というポジションだけは守りたい。
もし、暖がゲイだと知られたら、友人ですらいられなくなる気がしていた。
「暖。どうした? 変な顔をしてるぞ」
「え? 変な顔」
暖は自分の顔に両手をあて、確認するように撫でる。
「ほら。変な顔。ほれ」
芳樹は制服のジャケットのポケットから手鏡を取り出して、暖に見せてきた。
「うん? そんな変かな」
「そう気がしたけど、違う?」
芳樹は端正な顔立ちをしているだけでなく、どんな人にも優しく、どんなことでも受け入れてくれるような懐の広さがあった。
そんな彼だからこそ、暖は好きになってしまったのだった。



