四人法

 暖は「邪魔」と言って、背中にもたれかかっていたさやかをバンと振り払い、再び携帯を弄り始めた。

 よろけたさやかはそのままソファーにダイブする。

「まぁ、それぞれって感じだね」

 拓はそう呟きながら、キッチンの戸棚からあったコップを取り出す。

 潤子は棚を漁って、いつものドリップコーヒーを探していた。

「潤子さん、まだ見つからないの? ドリップコーヒ―」

「ないんだよ。拓さん、飲んだ?」

「いや、僕は飲んでないよ」

 拓は自分のコップを手に取り、ふっと目に入ったのはテーブルに置かれた潤子の愛用コーヒー。

「……暖。それ飲んでるのってさぁ、コーヒー?」   

 視線の先には、潤子がいつも大事にしているドリップコーヒーの空きパックが置かれていた。

「…え? もしかして、暖が飲んだの?」 

 潤子は慌てて暖がいるテーブルに駆け寄り、目を見開いて顔をしかめる。

「暖っ! それ、私のコーヒー!」

 怒り心頭の潤子が指をさす。

「潤子さん。そんなに怒らなくても……ストック、まだあるでしょ?」

 暖は悪びれずに棚の方に指を差し、スマホから視線を逸らさない。

「…暖……そろそろ、ちゃんと話を聞こうか」

 さやかがソファーから顔を出し、真剣な口調で言う。

「うん…これはさすがに、そろそろだね」 

 拓も潤子の様子を見て、静かに頷いた。

「いやいや…大丈夫でしょ…」