四人法

 みんなそれぞれ、中華丼を待っている。

「…さやか。終わるの何時?」

 潤子が頬杖をつき、メニュー表を見るのをやめ、仕事中のさやかを呼び止めた。

「うん、二三時には上がる」

「オッケー。もうすぐ終わるね」

 長い髪をかき分けてから潤子は親指と人差し指で丸を作り、再びメニュー表を見始める。

 三人とも中華丼を待っていると、「お待たせしました。中華丼でございます」と男性店員が運んできた。

「いつも、さやかがお世話になってます」

 潤子は丁寧に座ったまま、礼をしてゆったりとした口調で男性店員に言う。

「いえいえ、こちらこそお世話になっております。いつもご利用ありがとうございます。本当に仲いいですね」

 男性店員は中華丼をテーブルに置き、頬にえくぼを浮かべた笑顔で応えた。

 愛想笑いではなさそうだ。

 本当に笑っている。

 三人は目を合わせ、「いえいえ」と笑って答えた。

「おっ、美味しそう」

「よし、食べようか」

「うん」

 潤子・拓・暖は引き出しからスプーンを取りだして、「いただきます」と言い、黙々と食べ始めた。

「やっぱ、美味しいわ」

 拓は「くぅ」と上を見上げ、顔を崩して、美味しそうにする。

「うん。美味しい」

 暖も頬を緩め、目を細めていた。

「はぁ、生き返るわ」

 潤子も天井を見上げて、ため息をついた。

 何も声を発さずに三人は黙々と、どんぶりをスプーンですくっては口に運んでいた。