四人法

 
 その日から、彼女は少しずつ前向きに生きるようになった。

 以前、暴力を振るわれていた元カレのことをなかったことにしていたが、違うのだと気づいた。

 ―――あったことはあったのだ。

 事実をなかったことにはできない。

 ちゃんと、受け止めなければならない。

 だけど、あの日、声をかけてくれた彼の優しさが心に染みた。

 その出来事をきっかけに、彼女は仕事に打ち込んだ。

 いや、一つひとつを丁寧にこなすことで、人の役に立てる仕事が少しずつ回ってくるようになった。 

「自分の軸を曲げたくない、曲げずに自分が信じることをしていきたい」

 そう思える自分に、少しずつなれてきたと感じたある日。

 道である男性が外国人から話しかけられて困っていた。

 女性は学生時代から英語を学び、留学経験まである。英語を話すことは自信があるのだ。

「Excuse me, What happened?」

 女性は外国人に声をかけて、困っていた男性を助けた。

 そのあとも女性は外国人と数分話し、案内を終えた。

「……あ、急に割り込んでしまい、申し訳ありません。困ってるように見えたので」

 女性は男性に向き直り、少し恥ずかしそうに言った。

「いえいえ、本当に助かりました。英語すごく堪能なんですね。尊敬します」

 男性は丁寧にお礼を言った。

 女性は「いえいえ」と手を振りながら、優しく言葉を返した。