四人法

「だったら、あなたは天国にいるんじゃない。生きているんです。ちゃんと、今ここで!」

 暖は女性の両肩を優しく揺らしながら「現実だ」を訴えるように伝えた。

 その思いが届いたのか女性は静かに涙を流していた。

「……うぅぅ…好きでこんな風にいるんじゃない。私は生きたいんです……」

 女性はすすり泣きながら、顔を手で覆った。

 背中を支えていた暖は、女性が泣き止むまで、黙って静かに見守っていた。

「……落ち着きましたか?」

「はい。なんとか…本当ありがとうございます。お礼は、ちゃんとさせてください」

「いえ、別に。ほんの人助けです。あなたが起き上がってくれただけで俺は十分嬉しいです」

 そう言って、暖は女性の背中をそっと支えながら立ち上がらせた。

「……本当に、優しいですね」

「じゃあ、俺はこの辺で。失礼します」

 女性が無事立ち上がったのを確認して、暖はその場を立ち去ろうとした。

 だが、女性は「待って」と声をかけて、暖を引きとめた。

「どうかしましたか?」

「……君は、見ず知らずの人にも、いつもこうやって助けたりするの?」

「え? いや、たまたまですよ。お互い様です。今度、俺が困ってたら助けてくださいね」

 暖はそう言って微笑み、その場を後にした。

 女性は暖の後ろ姿をしばらく見つめていた。

 そのあと近くのコンビニで靴を買い、自分の家へ帰っていった。