四人法

 三人で交わしたその会話は、他の誰かに話すことはないだろう――そう思っていた。

 だが、後にさやかは「話せる相手がいる」ということに気付くのだった。

 暖はさやかと会う前に知らない間に誰を助けていた。

「……はぁ、だるっ」

 暖は学校や塾にも行かず、コンビニ前でぼんやりとコーラを飲み干していた。

「なんか、ないかな」

 暇を持って余していた暖は、特にすることもなく、周りを通りかかる人々を観察していた。

 そんな時だった。

「……泣いてるのか?」

 女性が一人、通りかかっていた。

 髪はボサボサで、しかも靴を履いていなかった。

 今は平日の昼下がり。

 通常なら仕事や学校に行っている時間帯だ。

 俺は今日学校に行っていないので人のことは言えないが、それでも彼女は明らかに社会人に見えた。

 仕事は休んだのだろうか。

 あるいは俺と同じく、ずる休みか。

 それにしても、大人の女性が靴を履かず、髪が乱れているなんてことは、普通はない。

 大人なら身だしなみくらい整えるはずだ。

「うーん……」

 暖は地面に体育座りをしながら、歩く女性の様子を見て唸った。

「……これはやばくないか?」

 女性は足がもつれて、そのまま道端に倒れてしまった。

 その様子を見ていた暖はしばらく彼女がどうするのかを見守っていた。

「……うーん?」

 倒れた女性は立ち上がろうとせず、そのままうずくまっていた。