男の子は少し戸惑いながらも、待ち合わせを提案してきた。
「あ、はい。じゃあ、上野駅で」
そう言って、電話は切れた。
冷静に考えれば、彼と会ったのは一度きり。しかも、顔もはっきり見ていない。
初対面ではないけれど、誰が現れるのか分からない相手に会っても大丈夫なのか――不安がないわけではない。
でも、「怖い」という気持ちよりも「ちゃんと生きているかを知りたい」という想いの方が勝っていた。
十五分後、さやかは上野に着いた。
「…どこにいるのだろう。また、電話かかってくるかな……」
上野駅の改札口付近にさやかは立っていた。
周囲を見渡していると、携帯を弄りながらキョロキョロしている男の子が一人いた。
「……うーん、あれかな」
首を傾げたあと、さやかは先ほどかかってきた電話番号にかけ直した。
「あの……もしかして、上野駅着きました?」
ヒソヒソ声で電話の相手に尋ねる。
「……っあ、はい」
さやかは電話を耳にあてる。
「はい。着きました。どこにいますか?」
「あの……もしかして、柱のところに寄りかかってる方ですか?」
携帯を耳から外し、目の前の男の子を見ると、彼が頷いた。
「あっ……初めてじゃないですね。今日は会って下さり、ありがとうございます」
あの時は顔を下に向いていたので、顔立ちは分からなかった。
さやかは落ち着いた雰囲気に少し戸惑いながらも改めて彼を見つめた。



