蛍里は得も言われぬ不安に駆られ、慌てて
パソコンを開いた。専務の連絡先はわからない
が、あのサイトから彼にメールを送れば、何か
返事をくれるかもしれない。
蛍里は、お気に入りに保存してある詩乃守人
の小説サイトをクリックした。そうして、出て
きたページに目を見開く。
そこに映し出されたのは、真っ黒な背景にちら
ちらと淡色の花びらが舞う、見慣れた表紙ではな
かった。
真っ白な画面の左上に「404NotFound」の
文字。
「このURLは存在しない」、または「すでに
ページが削除された」というエラーメッセージだ。
「えっ、なんで……?」
蛍里は信じられない思いで、もう一度、彼の
サイトを開いた。
けれどそこにはエラーメッセージが表示される
ばかりで、詩乃守人のサイトは存在しない。蛍里
はわけがわからず、震える手を握りしめた。
彼が詩乃守人だと知ってから、あの緑道公園
で彼に会った日から、このサイトは見ていなかっ
た。だからいつサイトが削除されたのかも、わか
らない。
「どうして……」
蛍里は会社での彼の様子を必死に思い起こ
した。
最後に彼と話したのは、傘を貸したあの雨の
日だ。けれど、あれからもう半月以上が過ぎて
いる。それに、社内で顔を合わせれば彼は笑み
を見せてくれたし、仕事を頼まれたことだって、
何度もあった。
ひとつだけ、気になることがあったとすれば、
彼の不在が多かったということ。専務室で彼の
姿を見ることが、少なくなっていたのだ。
ただ純粋に、仕事が忙しいのだと思っていた。
周囲も、特にそのことを気にしている様子が
なかった。
蛍里は、はたと思い至って彼のSNSを開いた。
こちらも、あの日からずっと見ていなかったが、
もしかしたら彼が何か書き込んでいるかも知れ
ない。けれど、SNSに彼のアカウントは存在して
いたものの、更新日時はひと月も前で途切れて
いた。蛍里は肩を落として、パソコンを閉じた。
彼と連絡を取るすべは、なかった。
明日、早めに出勤すれば、或いは、彼と話せ
るチャンスがあるかも知れないけれど……。
蛍里はコートを脱ぎ、ハンガーにかけた。
そうして、そのままうつ伏せでベッドに倒れ
込んだ。
どうして急に、合併などという話になったの
だろう。こういう事態を回避するために、専務
は秋元紫月との結婚を決めたのではなかったか?
少しだけ冷静さを取り戻した頭で、蛍里は考えた。
そして、一つの可能性に思い至る。
もしかしたら……彼が秋元紫月との婚約を破棄
したのではないかという、可能性。
まさか。
蛍里は、ゆっくりと体を起こした。
急激に口の中が渇き、心臓はどきどきと、早鐘
を打っている。
パソコンを開いた。専務の連絡先はわからない
が、あのサイトから彼にメールを送れば、何か
返事をくれるかもしれない。
蛍里は、お気に入りに保存してある詩乃守人
の小説サイトをクリックした。そうして、出て
きたページに目を見開く。
そこに映し出されたのは、真っ黒な背景にちら
ちらと淡色の花びらが舞う、見慣れた表紙ではな
かった。
真っ白な画面の左上に「404NotFound」の
文字。
「このURLは存在しない」、または「すでに
ページが削除された」というエラーメッセージだ。
「えっ、なんで……?」
蛍里は信じられない思いで、もう一度、彼の
サイトを開いた。
けれどそこにはエラーメッセージが表示される
ばかりで、詩乃守人のサイトは存在しない。蛍里
はわけがわからず、震える手を握りしめた。
彼が詩乃守人だと知ってから、あの緑道公園
で彼に会った日から、このサイトは見ていなかっ
た。だからいつサイトが削除されたのかも、わか
らない。
「どうして……」
蛍里は会社での彼の様子を必死に思い起こ
した。
最後に彼と話したのは、傘を貸したあの雨の
日だ。けれど、あれからもう半月以上が過ぎて
いる。それに、社内で顔を合わせれば彼は笑み
を見せてくれたし、仕事を頼まれたことだって、
何度もあった。
ひとつだけ、気になることがあったとすれば、
彼の不在が多かったということ。専務室で彼の
姿を見ることが、少なくなっていたのだ。
ただ純粋に、仕事が忙しいのだと思っていた。
周囲も、特にそのことを気にしている様子が
なかった。
蛍里は、はたと思い至って彼のSNSを開いた。
こちらも、あの日からずっと見ていなかったが、
もしかしたら彼が何か書き込んでいるかも知れ
ない。けれど、SNSに彼のアカウントは存在して
いたものの、更新日時はひと月も前で途切れて
いた。蛍里は肩を落として、パソコンを閉じた。
彼と連絡を取るすべは、なかった。
明日、早めに出勤すれば、或いは、彼と話せ
るチャンスがあるかも知れないけれど……。
蛍里はコートを脱ぎ、ハンガーにかけた。
そうして、そのままうつ伏せでベッドに倒れ
込んだ。
どうして急に、合併などという話になったの
だろう。こういう事態を回避するために、専務
は秋元紫月との結婚を決めたのではなかったか?
少しだけ冷静さを取り戻した頭で、蛍里は考えた。
そして、一つの可能性に思い至る。
もしかしたら……彼が秋元紫月との婚約を破棄
したのではないかという、可能性。
まさか。
蛍里は、ゆっくりと体を起こした。
急激に口の中が渇き、心臓はどきどきと、早鐘
を打っている。
