今の言葉をそのまま受け取るなら、滝田は
自分に“好意”があるのだと、そう言っていること
になる。酒に酔ってあらぬことを口走ってしまっ
たのか?蛍里は戸惑いながらも、そうとは知られ
ぬように平静を装った。
「ああ、あの時はね、滝田くん人気あるねって、
五十嵐さんと喋ってたの。両手に花って感じで、
すごく楽しそうだったし」
そう言った蛍里に目を細めると、滝田は小さく
首を振った。何だか、彼の雰囲気がいつもと違う
ような気がする。自分を見つめる瞳の奥に熱を
感じるのは、気のせいだろうか?
「他の女子にモテたって、ぜんぜん嬉しくない
よ。そりゃ、酒の席は楽しいけど。俺は好きな子
が隣りにいてくれた方が嬉しいし、さっきだって、
折原さんが隣りにいてくれたらなって、ずっと思
ってた」
真っ直ぐに自分を見つめながらそう言った
滝田に、蛍里は信じられない思いで目を見開く。
鼓動が速くなる。
その音が、耳にまで響いて聞こえる。
何か口にしなければ、答えなければと思うの
に、緊張で張り付いた喉から声は出てくれない。
「……あの」
ようやく、そのひと言だけを喉から絞り出した
蛍里に、滝田はぞくりとするほど、甘い声で言っ
た。
「好きだよ。すごく。新人研修で一緒になった
時から、俺、ずっと折原さんのこと……」
その言葉に、いっそう鼓動が大きく鳴った時だ
った。一瞬のうちに滝田の伏せられた睫毛が
近づいたかと思うと、蛍里は彼に唇を重ねられた。
むっ、と酒の匂いがして、蛍里は眉を顰める。
けれど、重ねられた温もりは柔らかく、やさしく、
何度も繰り返し求められる。
その唇から逃れなければと思うのに、蛍里は
体の自由がきかなかった。柱に背を預けている
蛍里の肩を、滝田が押さえるように抱いている。
逃げられない。
滝田の唾液で唇が濡れていく。
その唇をこじ開けて、ぬるりとしたものが蛍里
の口の中に入ろうとしていた。
嫌だ。
蛍里は、ぎゅっ、と目を閉じた。
滝田が嫌いなわけではない。
どちらかと言えば、好きなのかもしれない。
けれど、それは同期としての、友人としての
滝田だ。専務に感じるような切なさや胸の痛み
を、彼に感じることはなかった。
「……んんっ!!」
蛍里は唇を奪われながら、もがきながら、
滝田の肩を押した。びくともしない。ついに、唇
を割って舌が入り込んでくる。蛍里は目を見開き、
思いきり滝田の肩を押した。
その時だった。
「……っわっ!!」
突然、滝田の呻き声と共に蛍里は解放された。
自分に“好意”があるのだと、そう言っていること
になる。酒に酔ってあらぬことを口走ってしまっ
たのか?蛍里は戸惑いながらも、そうとは知られ
ぬように平静を装った。
「ああ、あの時はね、滝田くん人気あるねって、
五十嵐さんと喋ってたの。両手に花って感じで、
すごく楽しそうだったし」
そう言った蛍里に目を細めると、滝田は小さく
首を振った。何だか、彼の雰囲気がいつもと違う
ような気がする。自分を見つめる瞳の奥に熱を
感じるのは、気のせいだろうか?
「他の女子にモテたって、ぜんぜん嬉しくない
よ。そりゃ、酒の席は楽しいけど。俺は好きな子
が隣りにいてくれた方が嬉しいし、さっきだって、
折原さんが隣りにいてくれたらなって、ずっと思
ってた」
真っ直ぐに自分を見つめながらそう言った
滝田に、蛍里は信じられない思いで目を見開く。
鼓動が速くなる。
その音が、耳にまで響いて聞こえる。
何か口にしなければ、答えなければと思うの
に、緊張で張り付いた喉から声は出てくれない。
「……あの」
ようやく、そのひと言だけを喉から絞り出した
蛍里に、滝田はぞくりとするほど、甘い声で言っ
た。
「好きだよ。すごく。新人研修で一緒になった
時から、俺、ずっと折原さんのこと……」
その言葉に、いっそう鼓動が大きく鳴った時だ
った。一瞬のうちに滝田の伏せられた睫毛が
近づいたかと思うと、蛍里は彼に唇を重ねられた。
むっ、と酒の匂いがして、蛍里は眉を顰める。
けれど、重ねられた温もりは柔らかく、やさしく、
何度も繰り返し求められる。
その唇から逃れなければと思うのに、蛍里は
体の自由がきかなかった。柱に背を預けている
蛍里の肩を、滝田が押さえるように抱いている。
逃げられない。
滝田の唾液で唇が濡れていく。
その唇をこじ開けて、ぬるりとしたものが蛍里
の口の中に入ろうとしていた。
嫌だ。
蛍里は、ぎゅっ、と目を閉じた。
滝田が嫌いなわけではない。
どちらかと言えば、好きなのかもしれない。
けれど、それは同期としての、友人としての
滝田だ。専務に感じるような切なさや胸の痛み
を、彼に感じることはなかった。
「……んんっ!!」
蛍里は唇を奪われながら、もがきながら、
滝田の肩を押した。びくともしない。ついに、唇
を割って舌が入り込んでくる。蛍里は目を見開き、
思いきり滝田の肩を押した。
その時だった。
「……っわっ!!」
突然、滝田の呻き声と共に蛍里は解放された。
