「へぇ……」
蛍里は感嘆の声を漏らすと、彼のアカウントに
釘付けになった。自己紹介の欄にはたったひと言、
「オリジナル恋愛小説サイトの管理人です」とい
う自己紹介文があるだけだが、スクロールして彼
の書き込んだ内容を見れば、小説サイトの作品紹
介の他に、彼の好きな小説の話や日常の出来事ま
でもが何げなく記されている。
蛍里はいままで知ることのなかった彼の一面に
目を輝かせながら、夢中で投稿文を読んだ。
そうして、ある文章と共に貼り付けられた一枚
の写真に目を留めた。どきりと心臓が跳ねる。
その写真の風景に、見覚えがあったからだ。
載せられていた風景は、蛍里の勤める会社か
ら歩いて数分のところにある、緑道公園のものだ
った。
立ち並ぶビルの間に流れる河川を、時折々の
花と縁で彩った癒しの空間で、蛍里も天気が良い
日などは、ひとりお弁当を持ってこの緑道のベン
チで昼休みを過ごすことがあった。
その緑道公園が、詩乃守人のSNSに載っている。
蛍里は書きこまれた文章に目を走らせた。
「職場近くにある緑道公園です。市街地の中心
にありながら、都会の喧騒を忘れさせてくれる緑
豊かな空間で、僕はよくこの場所を訪れます。
鮮やかな光に彩られる夜の風景にも癒されます
が、水面に反射する陽の光を眺めながら物語の
考案をするのが、至福のひとときです」
蛍里はその文章を読み終えると、糸の切れた
人形のように、背もたれに躰を預けた。
そして、天井を見上げた。彼は、詩乃守人と
名乗るその人は、蛍里の近くにいるのだ。
どこの会社に勤め、どんな仕事をしているのか
はわからないけれど、蛍里と同じようにあの場所
を好み、彼はあの河の水面を眺めながら物語を
生み出している。
蛍里はその光景を想像しながら、瞼を閉じた。
もしかしたなら、彼とは知らずにすれ違ってい
たこともあるかも知れない。互いに、顔も名前も
知らないのだ。もし、彼が隣りのベンチに座って
いたとして、どうして気付くことができるだろう?
会いたい。彼に、会ってみたい。
蛍里は、ぱちりと目を開けるとサイトのメール
フォームを開いた。ぱっ、と真っ白な画面が表示
されてキーボードに手を添える。急くような心持
ちで“詩乃 守人様”と宛名を書きこんで、蛍里
の手は一旦、そこで止まった。
いったい、何と書けばいいのだろう?
蛍里は感嘆の声を漏らすと、彼のアカウントに
釘付けになった。自己紹介の欄にはたったひと言、
「オリジナル恋愛小説サイトの管理人です」とい
う自己紹介文があるだけだが、スクロールして彼
の書き込んだ内容を見れば、小説サイトの作品紹
介の他に、彼の好きな小説の話や日常の出来事ま
でもが何げなく記されている。
蛍里はいままで知ることのなかった彼の一面に
目を輝かせながら、夢中で投稿文を読んだ。
そうして、ある文章と共に貼り付けられた一枚
の写真に目を留めた。どきりと心臓が跳ねる。
その写真の風景に、見覚えがあったからだ。
載せられていた風景は、蛍里の勤める会社か
ら歩いて数分のところにある、緑道公園のものだ
った。
立ち並ぶビルの間に流れる河川を、時折々の
花と縁で彩った癒しの空間で、蛍里も天気が良い
日などは、ひとりお弁当を持ってこの緑道のベン
チで昼休みを過ごすことがあった。
その緑道公園が、詩乃守人のSNSに載っている。
蛍里は書きこまれた文章に目を走らせた。
「職場近くにある緑道公園です。市街地の中心
にありながら、都会の喧騒を忘れさせてくれる緑
豊かな空間で、僕はよくこの場所を訪れます。
鮮やかな光に彩られる夜の風景にも癒されます
が、水面に反射する陽の光を眺めながら物語の
考案をするのが、至福のひとときです」
蛍里はその文章を読み終えると、糸の切れた
人形のように、背もたれに躰を預けた。
そして、天井を見上げた。彼は、詩乃守人と
名乗るその人は、蛍里の近くにいるのだ。
どこの会社に勤め、どんな仕事をしているのか
はわからないけれど、蛍里と同じようにあの場所
を好み、彼はあの河の水面を眺めながら物語を
生み出している。
蛍里はその光景を想像しながら、瞼を閉じた。
もしかしたなら、彼とは知らずにすれ違ってい
たこともあるかも知れない。互いに、顔も名前も
知らないのだ。もし、彼が隣りのベンチに座って
いたとして、どうして気付くことができるだろう?
会いたい。彼に、会ってみたい。
蛍里は、ぱちりと目を開けるとサイトのメール
フォームを開いた。ぱっ、と真っ白な画面が表示
されてキーボードに手を添える。急くような心持
ちで“詩乃 守人様”と宛名を書きこんで、蛍里
の手は一旦、そこで止まった。
いったい、何と書けばいいのだろう?
