1:多喜田友佑



 喫茶ひだまりにいたのが都筑勝浬と女性だったかもしれない。



 もしも本当にそうだったのなら、その女性は宮古日奈だったのではないだほうか。



 僕と力はそんことを考えついてから3日間喫茶ひだまりに通った。残念なことにいつも空振りで日奈さんらしき人は来なかった。



 土曜日、前ならヒナちゃんに会えるとウキウキしていた時間が来た。でも、ヒナちゃんが幼馴染の勝ちゃんとわかってから、もはや一緒にスイーツを食べるなんてできやしなかった。



 僕はあくまで『ヒナちゃんねる。』のファンだった。そして、勝ちゃんと僕はドッヂボールごときで友情が崩れた関係なのだ。腐っても仲良くパンケーキを食べるような仲ではない。



 普段なら力も一緒に来てくれるのだがさすがに学校が休みの日まで一緒に来てもらうわけに行かず、僕は彼に黙って喫茶ひだまりに向かった。



 「あ」



 「……!」



 だが、入店する前に喫茶ひだまりから出てきた顔と目が合ってしまい、足が止まった。



 宮古日奈にそっくりな顔がそこに立っていた。だが、僕は当然この人が日奈さんなのかはわからない。



 170センチくらいの高身長だ。深くかぶった帽子から宝石のような青い瞳が覗いている。それは僕がずっと好きだった『ヒナちゃん』のものだった。



 だが、すぐに彼をヒナちゃんと思えなかったのは、ヒナちゃんと思わしき彼は僕の顔を見てすぐに目を背けて、まるで逃げるように早足でその場を去ったからだ。



 「勝ちゃん!」



 思わず名前を呼ぶが、彼は一切振り返ることなくこの場を去った。



 ……おかしい。



 今まで勝ちゃんは、まるで僕なんかに隠すことなんかないとでも言いたげに勝ち気に笑って僕の前でも『ヒナちゃん』をやってきた。そんな彼が、負けることが許せない彼が、逃げて行ったのだ。



 「日奈さんだったってこと?」 



 でも、写真で見た感じ日奈さんは170センチもあるような女性ではないだろう。まあ、厚底の靴を履いていたのかもしれないけどそこまでは確認しきれなかった。



 いなくなった彼は、誰だ? 



 僕は奇妙な現実に頭を抱えながら、とりあえず今日はひだまりに入らず家に帰ることにした。確か叔父さんが来る予定だったはずだ。多少は話ができるだろう。  



 僕はヒナちゃんもとい勝ちゃんの心理を知る為にこの事件を知らないといけない。何故かそんな思いが強いのだ。



 何故深く知りたいのか。もしかしたら、贖罪の意味もあるかもしれない。



 「『しょうり』なのに負けた」。あの言葉は、僕にとっては深く考えてもいないものだったが、言われた勝ちゃんにとってはよほど傷付くものだったのかもしれない。



 あの時から、いやずっと、僕は勝ちゃんの気持ちを全く考えてなんかいなかったのだ。



 だからせめて『ヒナちゃんねる。』についての彼の思いを知りたかった。父親が殺人犯になってしまった彼を見捨てられなかった。