眠れる俺の王子様

 唐突に、ふわりと体が浮く感覚がする。
 温かくて気持ちがいいので、俺はきゅっと体を丸めてつかまった。
 すると、大きな手のひらが、俺の頭を軽くなでる。
「髪、サラサラ……」
 誰かが、何か言っているけれど、よく聞こえなかった。
 俺のまつ毛をそっとなでて、頬を滑っていく。
 少しの間を置き、唇をたどった指先は震えていた。
 そして――……。
「せんぱい……すき」
 低い声がそう告げ、俺の首筋に顔を埋めて寝息を立て始める。
 吐息が、熱かった。
 ――ちょっと待て。今、なんて言った?