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誰にも言っていない、過去がある。
大切にしまっていて、開くのが億劫で、記憶ごとなかったことにしたいけれど、決して消えてくれない弱い過去が、俺にもある。
手繰り寄せるのに必死だった。
付き合う前も、付き合ってからも、とにかく必死になって離れないように、消えないようにと細い糸を掴もうとしていた。それを彼女には悟られないように、いつも平気なフリをして、すんとして隣に並んでいた。
あのとき、どうして引き止めなかったのか、ずっと、ずっと後悔している。
あの頃は、それが最善だと思っていた。
けれど、間違えてから気づいた。
俺はあの時、彼女を迎えにいくべきだったと。
気がついたころには、桜の季節に彼女はいなかった。
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