「お前の進言通りに事が進むのだ。母上も白楊の地を攻めるべきだとおっしゃっている。太后、そして私。この国を治める者が進めと言っておるのだ」
王は陶酔したように、虚空へ手を伸ばす。
「母上……太后様は、あの日、燃え盛る業火の中から、身を挺して私を抱きかかえて救ってくださったのだ。私は母上のために孝を尽くさねばならぬ。わかるな」
「ですが」
王が手に持つ扇が伏せられ、スッと真っ直ぐ崔瑾に向かってあげられる。
「お前が進まねば、お前とお前の軍、そしてお前が治める地の民を殺すまでだ。反逆罪でな」
王は、子供を宥めるかのように小さいため息を漏らした。
「お前は私の実母の生家、崔家の者であろう。ならば、私のためにその身を砕くことこそ、一族の誉れではないか」
崔瑾は奥歯を噛み締める。血が繋がっているからこそ、道具として使い潰す。いや、我が身に流れる王家の血筋こそ、大王や太后が敵視するもの。
「お前の配下共の姉妹や娘が後宮にいることを忘れるでないぞ。母上が私以上に厳しいお方ということは、わかっているであろう」
「っ——」
「母上の言葉は、常に正しい……そうだな、崔瑾」
崔瑾は、ほんのわずかに、喉元を締め上げられたかのように息を詰めた。だが、すぐに頭を下げ、自らの拳に爪を立てる。
それでも、焼け付くような熱を持って、じりじりと胸の奥から込み上げてくるものを、どうすることもできなかった。

